運動不足を解消しようと、先週の休日に思い立ってウォーキングに行きました。
以前から興味があった、東海道由比宿→興津宿の間を歩いてみようとおもいました。
場所としては静岡市内で最も東方に位置する所で、ウォーキングの間に薩埵峠(さったとうげ)という急勾配の通があるのが特色です。
この峠の上からの富士山の眺めが素晴らしく、観測カメラを設置して静岡県のホームページで公開しています。
桜エビで有名な由比駅で降りてウォーキングを開始。
上り坂に入ると、情緒豊かな由比宿の建物が続きます。
実はここら辺、熱海以上に海と山の距離が近く、崖崩れと海の波で通行止めの危険があります。
そのギリギリのところを、東名高速道路と国道1号線バイパスという大動脈が海の上を走っています。
東名高速道路を西から東に向かうとパッと景色が開けて海と富士山が見える箇所です。
名物は「びわ」らしくて、色々なところで採取や集出荷の準備をしている姿が見られました。
細い道では江戸時代の峠を感じさせるような箇所も。
ただウォーキングをすると疲れてしまいますが、景色や情緒がある所だと楽しんで歩けました。
さて、今回の話題は弁護士の書面の書き方についてです。
今週、兵庫県弁護士会が所属する弁護士を戒告(注意)しました。
その理由は準備書面に書いた内容が不適切で相手を中傷し、弁護士倫理違反にあたるというものです。
準備書面というのは、訴訟で代理人となった弁護士が、依頼者の主張を法的に整理して裁判所に提出する書面です。
依頼者の方々の気持ちを入れつつ、法的に必要・不要の判断もしなければなりませんので、作成するときには相当悩んで作ります。
民事訴訟や遺産分割調停を経験したことのある方なら分かると思いますが、敵となる相手には強い不信感や憎しみを持っているのが普通です。
そうじゃなければ、話し合いで解決したり、我慢したりして、わざわざ弁護士になんか依頼しませんよね。
さて、その準備書面に書かれていた内容ですが報道されている範囲では以下のような記載です。
「馬鹿馬鹿しい」
「インチキな連中」
「証拠があるなら、出してみろ」
「でっち上げの大嘘である」
さて、皆さん、どう思われますか?
眉をひそめたかたもいらっしゃると思います。
では、視点を変えてみましょう。
皆さんが今までの人生の中で最も嫌いな相手を思い出して下さい。
その相手と例えば土地の境界をめぐって争いになったとしましょう。
皆さんからみると、相手は嘘としか思えない理不尽な主張を繰り返してきます。
そんなときに、ご自分が依頼した弁護士が、相手に向かって戒告の対象となった上のような書面を作って出してくれたとしましょう。
どういうお気持ちになったでしょう?
「スッキリした!」と思われた方も多いのではないでしょうか?
弁護士の世界は常にそのような戦いの中にあります。
代理人とはいえ、依頼者から重大な紛争の解決をまかされた以上、相手を攻撃しないというのは無理です。
では、どうすれば良いのでしょうか?
さきほどと同じ趣旨のことを、別の表現に変えて準備書面に書くわけです。
「馬鹿馬鹿しい」→「信用性が極めて低い」
「インチキな連中」→「虚偽としか思えない理不尽な主張を繰り返している」
「証拠があるなら、出してみろ」→「証明に足りる証拠の提出が全くなされていない」
「でっち上げの大嘘である」→「事実と異なることは明らかである」
内容は一緒ですが、ちょっと上品になりましたよね(笑)。
言いかえた方の表現は、私を含めて多くの弁護士が似たようなことを書いていると思います(感情を伴う勝負事ですので)。
戒告された弁護士の表現は品を欠くことは確かですが、弁護士の仕事をしている以上、私としてはこの程度の書面が出てきても驚きも、怒りもしないと思います。
「ああ、これじゃ和解はとても無理だな。」
と判断して、どのようにしたら効果的な反撃になるかを冷静にじっくりと検討するでしょう。
当然、兵庫県弁護士会もこれは分かっていることです。
おそらくですが、戒告された弁護士に対する判断は、その準備書面だけでなく、日頃の行動など他の要素も合わせて戒告に至ったようにも思えます。
報道だと準備書面の表現だけで戒告できるように思えますが、決してそうではないことは分かっていただきたいと個人的には感じました。
「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。