いつも使っているインターネット上のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の中でも、ツイッターは気軽に使える方法だと思います。
だから、社会人だけでなく学生も多く使っていますよね。
今回ご紹介する大阪地裁での判決もツイッターによる名誉毀損でした。
これは大阪の大学で、講義で教授のスライドの写真を大学生がスマホで撮影してツイッターに次のような投稿をしました。
「阪神が優勝したら無条件で単位くれるらしい」
さすが大阪という感じですが、この投稿(ツイート)の内容が事実と異なったので大変なことになりました。
ツイッターの内容には、嘘や思い込みなど信用できない情報があふれているのは確かですが、面白い内容であれば、すぐにリツイートされますよね。
リツイートとは、投稿された内容を、投稿者とは別の人が、他のユーザーが見られるように再投稿することです。
この機能があることで、面白い情報であれば世界中に情報が拡散していくことになります。
そして、先ほどの学生が受けた講義で、教授が本当に言ったのは
「かつては、阪神タイガースが優勝した場合、全員合格とするという教授もいたが、現在はそんなことはない。」
ということでした。
ただ、スライドには
「阪神タイガースがリーグ優勝した場合には、恩赦を発令する。また日本シリーズを制覇した場合、特別恩赦を発令し、全員合格とする。」
と書かれていました。
おそらく学生に講義に興味を持ってもらうためにジョークを入れたのでしょう。
このスライドを示しながら、教授は「今では、こんなことはない」と説明をしたのです。
しかし、画像というのは恐ろしいもので、大学生が言葉で書いただけでは全く信用されないで終わったであろうことが、大きな話題となってしまいました。
そうすると、そのツイートの内容が本当かウソかは別として、話題になったこと自体がBILOBニュース、JCASTニュース、産経WESTや、まとめサイトで紹介されました。
ニュース記事の方は通常は1年以内には記事が入れ替わって消えますが、まとめサイトはいつまでも残ってしまいます。
そこで、この大学の教授はツイートした学生に、誤った投稿が書かれている各方面への削除要請を誠実にするように求めて話し合いました。
ところが、この学生は誠実な削除手続を行わず連絡もとれなくなったため、教授はやむを得ず慰謝料請求という形で裁判を起こしたというわけです。
名目は慰謝料請求ですが、この訴訟手続でも教授の目的はお金ではなかったことは推測できます。
裁判でしっかりと和解して、学生の削除に対する誠実な対応を求めたかったようです。
ところが、当の学生が裁判所に出頭しなかったため和解ができませんでした。
その結果、教授の慰謝料が認められる判決が下されることになりました。
さて、皆さん、この教授の慰謝料額っていくらになると思いますか?
答えは、
慰謝料20万円+弁護士費用10万円の合計30万円
の支払を認めるという結論です。
名誉毀損というのは、人の社会的評価を下げてしまったことに対して責任を追及するものです。
民事事件ではそれをお金に換算することになります。
しかし、この事案では、
①どの程度教授の社会的評価が低下したか?、金銭に換算するといくらか?を証明するのは難しいこと
②日本では慰謝料は低額に抑えられる傾向があること
から、20万円という慰謝料になったのでしょう。
とはいえ、日本中の話題にもなったので、学生はその後は就職にも苦労したかもしれません。
気軽にできるツイートですが、他の人の気分を害する内容の投稿はしない方が良さそうですね。
インターネットと法律の過去記事はこちらをご参照ください。