先日の連休で広島に行ってきました。
行き先は、厳島神社
それから、原爆ドームと平和記念資料館
でした。
約20年前に行ったことはあったのですが、宮島の雰囲気の変わり方、平和記念資料館の見学者に海外からの旅行者が多かったことが印象的でした。
旅行の風景も人の心の持ち方によって、大きく変わったり、異なったりすると思います。
それは、離婚する夫婦にも言えることです。
良くあるケースで、離婚前に妻が幼い子供を連れて突然家を出て行って別居にい至ることがあります。
この場合、幼い子を養育しながら生活をしなければならない妻から夫に対して生活費の請求ができます。
いわゆる「婚姻費用」の請求ですね。
ここで妻の見ている風景を見てみましょう。
妻としては、身勝手な夫との生活に嫌気がさしていますから、別居は自分にとって必然です。
子供が幼いから、夫が世話をできるはずもなく、自分が育てることしか選択肢はないと考えています。
さて、実家へ帰ろうかと一度は考えますが、帰りにくいことが多いようです。
理由は色々ですが、例えば兄や弟が結婚していて親と同居している場合には、他人である義理の姉妹の世話になることは気が引けます。
そうでなくても、昔から知っている人が多い実家に戻って、離婚前の別居というデリケートな状況の中で自分自身や子供を生活させたくないという妻も多いでしょう。
今では離婚は全く珍しくないものの、噂が好きな人はどこの世界にもいますからね。
そうすると、実家が遠方の場合はもちろん、近くにあっても戻れなくてアパートを借りざるを得ないことも多いのです。
そうすると、アパートに入る時にまとまったお金が必要な上、毎月5万円程度の家賃がかかるでしょう。
これに対して、夫の支払う適切な婚姻費用が毎月8万円だとすると、生活費は3万円しか残りません。
これでは、光熱水費と子供の病院代だけで消えてしまいます。
ところが、夫はその8万円すら支払おうとしません。
良いところで5万円程度、ひどい場合には1円も支払わないこともあります。
妻から見ると、家賃相当額すら支払おうとしない夫は、
「子供が飢え死にしても良い」
と思っているとしか思えません。
さて、これを夫から見た風景はどのようになるのでしょうか?
離婚に至る夫婦の場合、お互いに精神的に傷つけ合って別居することが多いので、当然、夫は自分に非があると思っていません。
夫婦喧嘩があっても、それはお互い様という感覚のため、妻がどうして突然別居してしまったのか分かりません。
しかも、夫にとっても可愛い子供を連れて出て行った妻に対して、子供を連れ去られたような怒りを覚えるでしょう。
そんな妻が、実家があるのにそこに戻らずにアパートを借りて生活費(婚姻費用)の請求をしてきました。
夫から見れば、実家に帰れない環境にあるのであれば、今の生活の中でしっかりと話し合いをして、子供のこともしっかりと決めてから別居すべきだと思えます。
しかも、自宅が持ち家の場合、夫には毎月とボーナス時に住宅ローンの重い負担がのしかかってきます。
夫としては、夫婦でこの家を建てる(買う)という約束で住宅ローンを計算して組んだのに、「嫌になったから住宅ローンは夫が一人で払え」というのは非常に身勝手に感じます。
そこで、夫は婚姻費用は最低限にした上で、子供のことは心配なので、医療費など必要な費用は明細を見せてくれれば支払うという気持ちになることが多いのです。
ところが、家庭裁判所の実務では、婚姻費用や養育費の使途を夫に報告する義務まではないという運用がされています。
夫としては、「支払った婚姻費用は、離婚して他人になる妻に全部持って行かれてしまうのではないか」と納得できない気持ちになるわけです。
そこで、婚姻費用をできるだけ削りたいという行動に出るのです。
私の経験によると、弁護士が扱う離婚事件では、この傾向は多かれ少なかれあると感じています。
もちろん、全ての夫婦の離婚や別居の原因が同じではないので、程度に差はあります。
夫が全く婚姻費用を支払おうとしないケースと、適正な婚姻費用が分からないから支払えないと考えているケースとがあるように思えます。
でも、夫婦当事者は、別居時点でお互いの信頼を無くしていますから、相手の行動を悪く評価してしまうことが多いです。
そこから、離婚の問題がこじれて、弁護士や裁判所がお手伝いしていくことになるんですね。
離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。