新聞記事に、自転車を盗んだとして、放送局の副局長が逮捕された記事が載っていました。
警察で任意で事情聴取を受けていたようですが、最終的には自分で出頭して
「忘年会の帰りに、早く家に帰りたくて盗んだ」
と自分で話しているようです。
この場合、自分で出頭したことや盗んだものの額が大きくないこと、おそらく全額被害弁償できることから、刑事事件としては罰金程度で終わる可能性が高いでしょう。
しかし、最も大きな問題は、その放送局がこの職員(被疑者)を懲戒解雇できるかでしょう。
役職から見ても、被疑者は長期間勤務してきていますから、本来退職する場合には相当多額の退職金が出るでしょうが、懲戒解雇だと退職金も出ません。
ですから、懲戒解雇できるかどうかは大きな問題です。
放送局は電波を独占する代わりに一定の公共的な性格を有しますので、簡単な問題と片付けることはできないでしょう。
もっとも、この被疑者の窃盗は仕事中ではなく、「忘年会の帰り」という仕事が終わったプライベートの時間で行ったものです。
また、公共放送の仕事そのものに関する違法行為でもありません。
強いて言えば、放送局の職員全体の信頼を損なったという理由でしょう。
しかし、この理屈は、ある程度の知名度のある企業であれば、あらゆる職員のあらゆる犯罪についてあてはまるものです。
これを認めてしまうと、「犯罪=懲戒解雇」という図式が出来上がってしまいます。
確かに、窃盗は犯罪ですが、それだけで長期間勤務してきた労働者としての立場を全く無視して良いということにはならないでしょう。
ですから、この事案で放送局がこの被疑者を懲戒解雇することは法律的には難しいと思います。
通常はこのような場合は、被疑者も職場にいにくくなり、雇う側もニュースに犯行が報道された職員を置いておきたくないという関係になります。
そのため、「被疑者の自己都合での退職」という形で辞めてもらって、退職金は支払うケースが多いです。
懲戒解雇はされなくても、結局は退職はすることになるのですから、人生設計を大きく狂わせることになります。
特に、お酒を飲んだときは、ルールを守ろうとする意識まで鈍ることがあるので、より注意した方が良いでしょうね。
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