婚姻費用(夫婦の生活費)と住宅ローン

暑い日が続きますね。

 

私は、このブログの他にも、ツイッターやフェイスブックのようなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をやっていますが、どちらかというとブログのように文章を書いていく方式の方が好きです。

 

私がフェイスブックで発信しているのは、どうでも良い日常の情報ですし、ツイッターは読書の趣味に走って本の感想や印象に残った一文などを発信しています。

 

このツイッターでの本の感想は「読書メーター」というアプリとリンクさせています。

 

感想を書くようになって思うのは、読み終わった直後でないと本全体から受けた感動や興味深さは具体的に書けないということです。

 

また、他の人に読んでもらうことを前提で感想を短くまとめることで、分析や理解が深まったり、同じ本を読んだ人の感想を読んで納得したりと、視野を広げられると感じています。

 

さて、今回は、婚姻費用の計算についてのお話です。

 

婚姻費用については、代理人がついている場合にはその額について相当シビアなバトルが行われることが多いです。

 

女性側にしてみれば「離婚までの生活費をできるだけ確保したい」という切実なことですし、

男性側にしてみれば「離婚して他人になるかもしれない人への出費はできるだけ減らしたい」という現実的な性格があるからです。

 

良く問題になるのは、夫が自宅を出て別居したが、その自宅は夫名義住宅ローンも夫が支払っているというケースです。

 

自宅には妻の子供が残っているのですが、夫にしてみれば自分が住んでいないのに住宅ローンを支払った上に、そこに無料で住んでいる妻の生活費を払うのは納得できないところです。

 

でも、妻からすれば、「夫が勝手に出て行ったのだから、それくらは予想できたはずで、今さらそのようなことを言い出すのはおかしい。」という感覚です。

 

お互いに当事者だけではまとまらないので、調停や審判(調停がまとまらなかった場合に裁判官が下す判決のようなもの)で争いになることが多いです。

 

意外に思われるかもしれませんが、「離婚調停夫婦関係調整調停)」以上にこの「婚姻費用分担請求調停」が大切で弁護士に依頼する必要性が高いのです。

 

なぜなら、離婚調停の場合は不服だったら応じなければ不成立(不調)となりますから、自分が不利だと思ったり、分からないときは、応じなければ良いからです。

 

ところが、婚姻費用分担請求調停は、応じないでいると、「審判」という手続に勝手に進んでしまい、お互いに提出した書面(主張や証拠)を基礎に裁判官が決めてしまうのです。

 

審判の中では、お互いに対面して主張しあう場面があります。

 

審判はだいたい30分~1時間程度ですが、普通の人は簡易算定表程度しか知らないでしょうから、その場での主張は中々むずかしいでしょう。

 

相手の弁護士から「基礎収入の計算方法としてこの方法が適切」「特別経費として医療費・住宅ローンを控除すべき」などの言葉が出てきたら混乱してしまうのではないでしょうか。

 

このうち夫が支払っている住宅ローンは、婚姻費用を計算するときに差し引かれるのでしょうか?

 

これについても、裁判官によって計算方法や考え方が違います。

 

裁判官は公務員ですが、憲法で仕事を独立して行うことが認められているので、裁判官によって判断が異なるのは刑事・民事を問わずどのような裁判でも良くあることです。

 

今までの裁判所の判断を整理すると、住宅ローンについては考慮する例が多いようですが、その考慮方法が色々あります。

 

考慮する方法について、大まかには2つに分けられるようです。

 

一つは、住宅ローンの支払額を夫の収入から差し引いて、夫の収入を少なく算出することで婚姻費用の額も減らすという方法です。

 

二つ目は、婚姻費用算定表による婚姻費用額から一定額を差し引いて、婚姻費用を減額するものです。

 

昨年、東京家庭裁判所で出された審判は、二つ目の方法をとりました。

 

つまり、夫名義の住宅に無料で妻が居住しており、その住宅ローンも夫が支払っている場合には、妻が居住費を負担していません。

 

そこで、居住費相当額(通常の家賃より大分安いです)を婚姻費用の額から差し引いたのですね。

 

この審判では、妻の収入が年間約200万円であり、その世帯の通常の居住関係費を2万7,940円だとして、婚姻費用からこの額を差し引いています。

 

妻からしてみれば、勝手に夫が出て行ってやむを得ず自宅にとどまっただけなのに婚姻費用を減らされることには納得できないでしょう。

 

夫から見れば、「1軒家に居住しているのだから、家賃にしたら10万円以上するはずだ」と考えるはずです。

 

裁判所としては、その双方の利益を考慮して間をとったという判断になります。

 

なお、公的機関もサービス業だから、自分が知らないことでも法律で定められていることは調停委員や裁判官から教えてもらえると思ったら誤解です。

 

裁判所での手続というのは、「当事者が努力して自分の権利を守るべき」という考えが原則なのです。

 

ですから、例えばこの住宅ローンの話も主張しなければ調停委員が夫に教えてくれたりしません。

 

逆に、妻に有利な事情でも積極的に妻に教えたりしません。

 

それをやってしまうと裁判所の中立性が疑われてしまうからなんですね。

 

裁判所を利用するときには、徹底的に自分で調べて権利主張するか、そこに不安がある場合には弁護士に依頼するということが前提になっているのです。

 

裁判や調停で、調停委員や裁判官から

「代理人(弁護士)は選ばないのですか?」

と言われたら、自分が有利な事情を主張し忘れているか、相手がごり押ししようとしていると思った方が良いでしょう。

 

自分の権利は自分で守ることは大切ということなんですね。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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カテゴリー: 離婚のお話

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