訴訟と違って、遺産分割調停や離婚調停の場合には、依頼された弁護士が依頼者の方と一緒に家庭裁判所に行きます。
調停では、原則として、持ち時間約2時間のうち、30分ずつ使うことになっています。
もっとも、この原則通りだとしても、待ち時間として相手が話している30分×2回=1時間は待合室にいることになります。
調停の待つ時間の中では、弁護士は事件の方針の話もしますが、相手方の出方で方針も変わるので、全て事前に決めることはできません。
また、待ち時間の間ずっと打ち合わせをする必要もありません。
そのため、弁護士の多くは、その間、依頼者の方と雑談をします。
弁護士の世界も独特で一般には知られていませんが、意外と依頼者の方の仕事の内容や趣味にも相当の独自性があることが多く、つい色々と質問をして聞いてしまいます。
依頼者の方にとっては当たり前のことでも、その仕事を経験していない私にとっては、非常に興味深いものがあったりします。
ブログでは書けないようなディープなお話を聞けることもあったりして、結構楽しんでいます。
逆に依頼者の方から弁護士の仕事の質問をされたりします。
多いご質問としては「人1人殺して、どうしてあんな軽い刑にして良いのか?」でしょうか。
弁護士や裁判官であれば、当然、自分なりの考えを持っていますし、ひょっとしたら一人一人が微妙に違うように思えます。
ですから、私も「私だけの感覚かもしれませんが・・・」と前置きをしてご説明するようにしています。
さて、今回は関係の無い方もいるかもしれませんが、国際結婚を前提としたお話です。
別居の夫婦の生活費(婚姻費用)や子供の養育費の請求をする場合に、相手がフィリピン、中国、イギリスなど外国籍の場合に、日本の家庭裁判所で判断できるのかをご説明します。
実は、普通の訴訟(民事訴訟)では、法律(民事訴訟法)で、訴訟の当事者の一方が外国籍の場合の裁判所の取り扱いについて定めています。
ところが、婚姻費用や養育費について適用される法律(家事事件手続法)には国際的な事件について、家庭裁判所がどこまで踏み込めるかについての定めがありません。
そこで、夫婦の一方が外国籍の場合、婚姻費用や養育費の請求の調停や審判を、日本の家庭裁判所に申立できるのかが問題となるのです。
現段階では、平成27年10月9日の法制審議会で採択された「要綱」を参考にする他は無いでしょう。
これによると、
① 扶養をする義務がある者(通常が収入が多い夫)の住所が日本国内にあるときには、国籍にかかわらず、日本の家庭裁判所に、養育費や婚姻費用の請求の調停を申し立てることができます。
また、
② 扶養権利者となるべき者、つまり収入が少ない配偶者(通常は妻)又は子供の住所のいずれかが日本にあれば、婚姻費用や養育費は夫が外国籍でも日本の家庭裁判所に調停を申し立てることができることになります。
もっとも、婚姻費用や養育費を支払う夫が海外に居住してしまっている場合には、夫に責任があると申立をしても、実際にお金を支払ってもらえるのか難しいでしょうから、日本に戻ってくる可能性が高い場合にだけ申し立てるべきでしょう。
訴訟や調停で海外と関わる場合に、どこの国の裁判所が判断すべきなのか(「国際裁判管轄」といいます)は、法の整備や条約締結の有無によって変わってくるので、弁護士としても、依頼を受けてから調べることも多いんですね。
離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。