子供が死亡しても親の輸血拒否は許される?

先日、静岡市内の草薙球場で、日本ハムVSソフトバンクのプロ野球の試合がありました。

 

静岡市といえばサッカーという印象がありますが、プロ野球でも2万1,000人も観客が入ったそうです。

 

プロ野球に興味がある人が思ったより多いのか、時々だから集まるのか、好カードで先発ピッチャーが有名な大谷選手だったからなのか分かりません。

 

ただ、試合展開も面白い試合で、観に行かれた方は十分に楽しめたのではないでしょうか。

 

さて、今回は、

子供の手術に対して、親が医師による輸血をすべて拒否して、子供の命が危ない場合に、児童相談所が助けることができるのか?

という問題についての平成27年4月の東京家庭裁判所の判断についてご紹介します。

 

このケースでの子供は0歳児です。

 

自分では意思表明できない年齢の子供が、良く吐くようになり、おかしいと思って検査したところ病気であることが判明しました。

 

この病気は手術以外に完全に治す方法は無く、手術を行うことで完全に治すことができます。

 

これに対して、この子供は手術をしないと成長しないまま死亡する可能性があったのです。

 

そして、手術の死亡リスクは4%未満という診断でした。

 

この手術は相当の出血を伴いますし、0歳児という血液の絶対量が少ない患者ですから、輸血がどうしても必要です。

 

ところが、この子供の父母が宗教上の理由から手術に伴う輸血を拒否しました。

 

0歳児の手術には親権者の同意が必要であり、親権者は両親だけですから、他の人が口を出すことは原則としてできません。

 

また、両親自体の信教の自由は憲法に保障された権利として尊重しなければなりません。

 

しかし、自分の意思を表明できない子供自身にも、生きる権利(憲法13条で保障されています。)があります。

 

両方の権利を比較して、はかりにかけた場合、生きる権利の方が緊急性があり、もし死亡してしまうと永遠に取り戻せないという特殊性があります。

 

このような場合にも、両親が親権を自分の思想信条や裁量で何でも自由にしてしまうことには、問題があります。

 

そこで、平成23年の民法改正で「親権の行使が」「不適当であることにより子の利益を害するとは、家庭裁判所は2年の範囲を超えない範囲で」親権の停止を決定できると定めました。

 

そこで、子供を保護する役割をもつ都道府県又は市の児童相談所は、この制度を使って子供を保護しようと考えました。

 

そこで、児童相談所長名で、東京家庭裁判所に「輸血を拒否する父母の親権を一時的に停止して、それと同時に親権の仕事を行う代行者として児童相談所長を選任して欲しい」との申立を行ったのです。

 

東京家庭裁判所はこの申立を認めました。

 

そこで、児童相談所長が親権の職務代行者として、輸血に同意して手術が行われたということになります。

 

これは、平成23年の民法改正前は、親権については「親権を喪失させる」という制度しかなく、そのハードルは極めて高いものでした。

 

そこで、「一時的な親権の停止」というより緩やかな要件で認められる制度を設けて子供を親の育児放棄や不適当な親権行使から守ろうとしたものです。

 

ここでは、児童相談所としても信教の自由と衝突する問題ですから、相当悩んだのだろうと思います。

 

ただ、私を含めて多くの国民は、この児童相談所の判断と行動に賛成するのではないでしょうか?

 

その意味では、民主主義的に見れば、この児童相談所の判断と行動は適切だったといえるでしょう。

 

命が助かった子供自身が、将来、「良かった」と思ってもらえることを祈ります。

 

「親族間のトラブル」のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 親族間のトラブル対策

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