関東を中心に全国的に雨が続いていますね。
関東地方では、多摩川が世田谷付近で決壊寸前、鬼怒川は決壊してしまったようです。
被害にあわれた方へのお見舞いと、今後の被害が少なく終わることをお祈りします。
さて、夫婦の間でも相続が生じることは皆さんご存知のことと思います。
この根拠は「配偶者」は「常に相続人となる」と定める民法の規定です。
ですから、仮に、夫が死亡すれば、「配偶者」である妻は常に相続人となります。
その結果、子供がいれば、妻と子供ですべての夫の財産を相続することになります。
そして、子供が幼い場合、親権者として子供の財産を管理するのは妻ですから、結果的に妻が夫のすべての財産を自由にできることになってしまいます。
これは、夫が妻に離婚調停や離婚訴訟を起こしている最中でも同様です。調停中・訴訟中に夫が死亡してしまうと、調停・訴訟自体が終わってしまいます。
そうすると、離婚前に夫が死亡したとして、やはり妻が夫の財産を相続できるんですね。
では、夫婦関係が最悪で妻に財産を相続させたくない夫はどうすれば良いのでしょうか?
まず、できるだけ早く公正証書遺言で自分が一番財産を与えたい相手、例えば「親や兄弟姉妹にすべて遺贈する」という遺言を残すことが必要です。
もっとも、妻や子には遺留分があります。
遺留分というのは、遺言でも奪うことのできない相続分であり、妻や子供の場合には本来の相続分の1/2がこれにあたります。
そのため、財産の1/4は妻に、1/4は子に遺留分があるため、妻と子が遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)をすると合計1/2の夫の財産を妻子が取得できることになります。
そこで、夫は二つの手段を同時に進める必要があります。
① 離婚調停を飛び越して離婚訴訟を行うようにすること
② 遺言の中で「推定相続人廃除」の意思表示をしておくこと
です。まず①の点ですが、離婚では調停前置主義と言われて、訴訟の前に調停を行わなければなりません。
しかし、今回のケースのように夫が重い病気の場合には、調停をしている時間がありません。
そこで、診断書をつけるなどして、調停をしている時間が無い切迫した事情を家庭裁判所に説明の上で、直接離婚訴訟を起こせば、家庭裁判所は調停に回すことなく、離婚訴訟として受け付けてくれます。
そこで、できる限り原告となる夫は訴状ですべての主張と証拠を出して、裁判官に次回期日を短めの期間で入れてもらうよう要請します。
そうすることで、夫が生きているうちに離婚判決が確定すれば、妻はその時点で相続権を失います。
次に②の「推定相続人廃除」の準備をしておくことです。
これは、相続人から「遺留分を奪い去る」裁判所の審判を求める手続きです。
ただ、ひどい相続人の相続分を奪うためのものですから、以下の一定の要件がある場合にのみ認められます。
・夫(被相続人)に虐待・重大な侮辱を加えた場合
・妻(相続人)に著しい非行があった場合
です。
ですから、例えば、夫は妻の不貞の証拠や暴言の録音などを証拠としてしっかりと残しておいて「著しい非行」や「重大な侮辱」の主張をしていくことになるでしょう。
そして、相続人の廃除は遺言でもできますから、もし、自分が死亡してしまいそうだったら、遺言の中で特定の相続人(このケースでは妻)を廃除しておかなければならないんですね。
離婚訴訟中だとしても、一方が死亡してしまうと訴訟は終了して、夫婦間で相続が始まってしまうということを、もう一度再確認しておいてください。
相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。