死亡保険金を取り戻す

このお盆は、暑くて、お出かけされた方は大変だったのではないでしょうか。

 

私は、ラッシュとは逆方向の田舎の実家に日帰りで行って、バーベキューをした程度でした。

 

後は、イヌやネコとゴロゴロしながら雑多な種類の本を読んでいました。

 

読んだ本は、例えば、

 

「サッカーは監督で決まる」(清水英斗)

 

「最強の広島カープ論」(二宮清純)

 

「終わりなき夜に生まれつく」(アガサ・クリスティ)

 

「鬼平犯科帳」(池波正太郎)

 

「ストーリーとしての競争戦略」(楠木 建)

 

などなどです。

 

アガサクリスティは、「アガサクリスティ読本」という本を読んで、数冊読んでいない名作があることに驚き、あわてて購入しました。

 

高校生以来だったのですが、人間の感情というのは時代を超えた変わらないものがあり、その描き方の巧みさはやはり「さすが」としか言いようがありませんでした。

 

また、鬼平犯科帳は巻数が多すぎて、どれを読んだのか忘れているのがまた適当な読書で良かったです。

 

池波正太郎の本は、どれも江戸時代の食べ物をとても美味しそうに描いているので、読むとついお腹がすいてしまうのは私だけでしょうか(笑)

 

また、ネコたちとも遊び(遊ばれ?)ました。

 

ネコを多頭飼している方はご存知だと思いますが、ネコたちは、夜、人が寝る頃になると大運動会を繰り広げます。

 

私の体を踏みつけてジャンプするのはもちろん、昨日は飲み水とドライフードを全部ひっくり返してしまって、せっかく電気を消したのに、起きて掃除をする羽目に・・・

 

でも、逆に、昼間は本を読む私のすぐ横で仲良く体を舐めあいながら、一緒にゴロゴロしてくれる姿に癒されるので、「まあ、許してやるか」と精いっぱい上から目線で許してやっています。

 

さて、相続における生命保険の取り扱いで失敗しがちなのが、

 

「相続人の1人を死亡保険金の受取人としている場合、遺産には含まれない」

 

というネット上の形式的な言葉だけを信じて、あきらめてしまうことです。

 

確かに、生前に被相続人(亡くなった人)が、相続人の一人を受取人に指定した場合、死亡保険金は遺産に含まれません。

 

つまり、受取人自身の財産という取り扱いになり、遺産分割調停をしても、話し合いの対象となる財産から外れるということです。

 

ただ、平成16年に出された最高裁の決定では、遺産から除外するとしつつも、生命保険金を一部の相続人が受け取ることで、相続人の間で著しい不公平が生じるような特段の事情がある場合には、取り扱いを別にしています。

 

つまり、特別受益(例えば、相続人の一人が生活費として贈与を受けていた場合)の場合に準じて処理をするとしているのです。

 

ここでの特段の事情は、主には

 

① 生命保険金の金額

 

② 遺産と生命保険金の金額との比率

 

③ 同居して介護していたなど、その受取人である相続人に受け取るだけの事情があるか 

 

などから判断していきます。

 

ですから、今後の遺産分割では、この平成16年の最高裁の判断を前提として考えていかなければなりません。

 

妻が受取人の場合で、婚姻期間が3年5か月にすぎない事情で、保険金額が遺産総額と比較して約60%にあたるケースについて特段の事情を認めた裁判例があります。

 

この場合の事案の結果を具体的に考えてみましょう。

 

例えば、妻と子2人が相続人で、遺産が8,000万円、妻が受け取る保険金額が4,800万円だとしましょう。

 

特段の事情が認められた場合には、妻の4,800万円を一旦遺産に戻して(「持ち戻し」と言います。)、形式的には遺産としてまず仮計算をします。

 

合計1億2,800万円の遺産がある中、妻の相続分は2分の1ですから、6,400万円です。

 

もっとも、妻は既に4,800万円の保険金を受け取っているので遺産からは1,600万円しかもらえません。

 

これに対して、子供たち2人は1億2,800万円の4分の1にあたる3,200万円をそれぞれ相続することができます。

 

この特段の主張をし忘れると、妻は4,800万円の保険金に加えて、遺産からも4,000万円をもらい、子供たちは2,000万円しか相続できないことになります。

 

主張をしっかりするかどうかで、1,200万円もの相続金額が変わってくるんですね。

 

このような、特段の事情を調停委員が進んで話をしてくれるかというと、それは一切ありません。

 

調停は話し合いの場であり、お互いに話し合いの中で合意すれば、別に判例など無視しても全く構わないからです。

 

それができるからこそ、遺産分割調停が弁護士を立てないでもスムーズにすすめられるのです。

 

もちろん、スムーズな分、権利主張については非常に弱くなってしまいます。

 

もっとも、権利主張でもめるよりは、数千万程度の損なら早く処理した方がトクだと思う人にとっては早期解決のメリットはあるとは思います。

 

早期の紛争解決も一つのメリットになるため、調停委員も、死亡保険金について受取人の指定があると、当事者から主張がない限り「特段の事情」など考慮はせずに、第1回の調停期日に当然のように話し合いから除外してしまいます。

 

「特段の事情」は、例えば「遺産総額に対して60%の保険金がある」という事実だけでなく、保険金をもらう妻が後妻で、婚姻届出後1ヶ月で保険金の受取人を後妻に変えたこと、婚姻期間が3年6ヶ月とうい事情など様々な事情を考慮しなければなりません。

 

これらの主張を総合的に子供たちの方から上手く主張していかないといけないということになります。

 

主張さえしっかりすれば、法律の分かる調停委員であれば、すぐに対応してもらえます。

 

また、そうでない場合でも、書面にして担当する裁判官に読んでもらえば、調停の進行中に考慮してもらえます。

 

遺産分割調停で対立が激しい場合には、法律や裁判例を知っておかないとご自分にとって上手く解決できないこともあることは知っておいていただければと思います。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話

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