来週から、事務所を閉めるということで、少し余裕があったので、新公開映画「ジュラシックワールド」を観てきました。
テーマは初回のジュラシックパークとほぼ同じでしたが、恐竜をコントロールできたかと思うと裏切られて、また仲間になったりと、爬虫類をコントロールする難しさが細かく描かれていたのが面白かったです。
また、人類が地球上の生物の頂点にいるという思い込みからくる「傲慢さ」も、DNAをいじって新しい恐竜を生み出すことで描かれていました。
恐竜の生息期間が約1億9,000万年。
人類は、約240万年で、人間が地球の環境に影響を与え始めてからは、2,300年そこそこです。
そんな短い期間で、地球の殆どの地域を手に入れようとしている種は、地球誕生以来、人類が初めてでしょう。
急激に発生するものは、急激に消滅するのも自然の法則です。
例えば、アフリカの全ての国がいわゆる「先進国」と同じ生活を手に入れたら、逆に、人類は種の保存機能を失って衰退の途を辿るように思えます。
子供の頃は、太陽が寿命が尽きる前に巨大化し(アンタレスのように)地球が飲み込まれるという科学的事実を突き付けられて恐怖していました。
でも、今では、人類がそんな長い天文学的な時間存続していくのは難しいと考えるようになったので、いつの間にか深く考えなくなりました。
こんなことを考えるのも、日頃の仕事と全く違う発想で、気分転換になりました。
さて、たまに依頼者の方からも「○○事件なんて簡単だから誰でも(どの弁護士でも)出来るんですよね。」と言われることがあります。
確かに、比較的処理が簡単な事件というものはあるかもしれません。
過払い事件については、そのような傾向が強いでしょう。
「素人でも出来る」と言われたりしますし。
未だに、過払い金の請求に奔走している弁護士事務所の必死な広告を見ると、「よほど他の仕事ができないのかな」と推測してしまいます。
もっとも、実は、過払い事件でも、ギチギチに細かい争点を貸し金業者が争ってくると相当面倒な訴訟にはなるのです。
ちょっと、専門的な言い方になりますが、例えば、①一連計算をして良いかどうかの争い、②期限の利益の喪失・遅延損害金の発生の有無、③領収証類の内容の真実性の争いというような所を争うと、それなりの覚悟がいります。
というのは、貸金業者が組織力を使って、色々な地方裁判所の裁判例を探してずらっと並べたり、訴訟の手続上本来は不要な大量な証拠を出してくるとちょっと面倒です。
証拠を1個、1個確認するだけでも時間がかかってしまうんですね。
貸金業者もそれをプレッシャーにして、訴訟前に値切ろうとしてきます。
最近では、アイフルあたりが、「訴訟になると面倒なことになりますよ」的な話をして、訴訟にしないでまとめようとする傾向があるように思えます。
こういう面倒な対応を、非効率なのを敢えて乗り越えて戦うことが誰でも出来るか?と言ったら、気力の問題ではありますが、違うでしょうね。
また、離婚事件や破産申立事件についても、弁護士によっては「誰でもできる」と言う人がいます。
確かに、これらの事件は、医療訴訟、著作権などの知的財産に関する訴訟、建築訴訟などと比べれば専門性は低いでしょう。
しかし、弁護士によって差が出るかどうかという意味で「誰でも出来る」というと「差は出る」と私は思います。
私は、「破産管財人」という裁判所から選任されて、会社の社長に代わって会社の最終的な清算をする仕事をやることがあります。
そうすると、破産の申立を色々な弁護士(又はその事務所の事務員)が作成した資料を見ることになります。
そうすると、破産申立一つとっても、弁護士のやり方に差があるのが分かります。
丁寧な処理をして、複雑な事件を一読了解の整理をしてくれる弁護士の書面を見ると、自分でも勉強になります。
ですから、裁判所や管財人から見ると、破産申立に関しては、明らかに弁護士(又は事務所の事務員)の事務処理能力の差が出ている事件でしょう。
離婚事件については、直接は「誰でも出来る」と聞いたことはありません。
ただ、弁護士が書いた実務書に「比較的誰にでもできるという誤解が弁護士の間にもある」と書いてあったので、そのような傾向があるのかもしれません。
しかし、戦略的に考えなければならないケースでは、弁護士の差が出ているように思えます。
例えば、婚姻関係の破綻時期が争われたとしましょう。
ここで、どうして「婚姻関係の破綻」を相手弁護士が争っているのか推測できないと、勝負になりません。
一番典型的な場面では、不貞行為との関係で争うケースです。
例えば、不貞行為日について、2014年8月1日の探偵会社の調査報告書を証拠として妻が夫に離婚とともに慰謝料請求をしたとしましょう。
ラブホテルに女性と入る写真がバッチリと写っていたというケースです。
相手は当然のように、2014年8月1日が初めての性交渉の日で、その日より前に婚姻関係が破綻していたと主張してきます。
なぜなら、慰謝料というのは精神的な傷ですから、夫婦関係が良好だと思っている配偶者ほど、不貞を知って傷つきます。
逆に、夫婦関係が最悪で、「あんな夫(妻)死んでしまえばいい」くらいに思っているケースでは、不貞行為を発見したら傷つくでしょうか?
「これで夫(妻)や不貞相手に慰謝料請求をして、離婚も有利に進められる。」とラッキーに思ったり、「やっぱりだらしない夫(妻)だ!」と怒りを覚えるケースの方が多いのではないでしょうか。
そのため、裁判例でも、夫婦仲が悪ければ悪いほど、不貞行為の慰謝料の額は下がる傾向があり、「破綻していた」となると最悪慰謝料0円となります。
そのために、相手は「婚姻関係の破綻後に不貞行為をしたから、慰謝料は発生しない」と言いたい訳です。
それ以外にも、破綻時期というのは色々と当事者にとって不利になったり、有利になったりしてくるので、複眼的な思考をして戦略を立てる必要が有ります。
たとえ真実は一つだとしても、民事訴訟(家事訴訟)での解決結果は、戦略や証拠の有無で決まることが多いので、一つではないということです。
そのような場合に、十分な経験を積んだか、経験が少ない場合にはそれに代わる調査や検討を十分にしたかによって、結果は大幅に違ってきます。
ですから、単に離婚の訴状を書く、準備書面を書く、尋問をするということであれば、「どの弁護士でも出来る」ことですが、その中身によって依頼者に良い解決を提示できるかどうかは大きく変わってくるということです。
同じ家事事件でも、相続事件については、「誰でも出来る」というような話は聞いたことが無いので、これは弁護士によって本当に大きな差が出る種類の事件ということなのでしょう。
ですから、離婚調停の調停委員を弁護士がやっていることにあたったことはありませんが、相続の遺産分割調停の調停委員は、弁護士が調停委員となっていることが珍しくありません。
調停をリードしていくにも、相続の場合には、法的な知識・判断力が必要ということなのでしょう。
とはいえ、弁護士の腕は相談する段階では分かりませんし、腕だけでなく相性も大切なところです。
大ざっぱですが、こういうタイプの事務所への依頼は辞めた方が安全だという私の考え方(正しいかどうかは別ですが)は、ブログで概要を書いて、公開しにくい情報はメールマガジンでご配信しようと思います。
離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。