弁護士の破産の仕事は二つある?

皆さんにも、それぞれ好きな飲み物があると思います。

 

日本茶、紅茶、コーヒー、中国茶、フレッシュジュース、お酒などなど色々好みはあるでしょう。 

 

私は、静岡人なので日本茶は水のように飲みますが、それ以上にコーヒーを飲みます。 

 

これは中毒といっても良いでしょう。 

 

中学生の頃に、喫茶店に1人で入ってブラックコーヒーを飲むことに憧れて、トライしてみてからの中毒です。 

 

凝り性の私は、だんだんと、喫茶店を選び出し、次には豆を自分で挽いて飲むことにこだわり始めます。 

 

そして、大学時代には、暇にまかせて、とうとう生豆を自分で購入して、自分で焙煎するということまでやりました。 

 

実はそれほどお金がかかる話ではありません。 

 

コーヒー豆の卸店に行けば、頼めば焙煎前の生豆を売ってもらえます。 

 

そして、それを簡単なフライパンに毛のはえたにょうな焙煎器具に入れて,ガスレンジで焙煎するのです。 

 

自分で焙煎して、その奥の深さを初めて知りました。 

 

まず、当然、焙煎したてが美味しいと思っていたのですが、全く違います。 

 

焙煎したての豆を挽いてコーヒーを淹れても、まだ生豆の香りが残っており青臭くて全く美味しくありません。 

 

ところが、数日おいておくと、中から油のようなものがしみ出てきて、味が変わってくるんですね。 

 

焙煎したて、1日後、2日後、3日後と比べて飲んで、一番美味しい日をメモしたりしていました(「大学の勉強は?」という疑問は当然スルーさせていただきます。)。 

 

ただ、自分で焙煎したコーヒーはいくら努力しても、専門店の味には到底及びません。

 

使ってる機械から、生豆の段階からピッキングで不良の豆を取る精度まで違うのですから当然といえば当然です。 

 

ですから、私はコーヒー専門店のコーヒー1杯の値段が500円前後でも、高いとは思いません。

 

それだけの技術と研究・努力が裏にあるから、それくらいの価格は私にとっては適正価格です。 

 

昔は「コーヒーを飲み過ぎると体に悪い」と言われていたのですが、最近では「肝臓に良い」とか言われて、余計調子に乗っています。 

 

しかし、肝臓の数値は、酒を飲むとすぐ悪くなるので、余り関係ないのでは?とも思いますが・・・

 

さて、「破産管財人」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 

これは何をする仕事なのでしょうか。 

 

まず、破産管財人に裁判所から選ばれるのは、全国的にも100%弁護士でしょう。

 

その仕事内容を一言で言うと 

 

「破産した会社の財産を調査して、隠し財産や漏れはないか調査して、その財産をお金に換えて、債権者に配当する」 

 

という仕事です。

 

会社の社長に清算を任せると、自分の生活ために会社の財産を隠して、債権者にウソの報告をする危険性がとても高いです。 

 

そこで、公平な立場の裁判所が、信頼できる弁護士を選んで、その処理をさせるんですね。

 

ですから、破産管財人は、決して破産する会社や社長の味方ではありません。

 

破産する人や破産会社の社長が相談に行って破産の手続を依頼するのは、「破産申立代理人」と呼ばれ、仕事の性質が全く異なります。 

 

「破産申立代理人」は、破産者の味方ですから、債権者に対しては敵対する関係となります(私も、この仕事をすることも多々あります)。 

 

そして、裁判所からも、厳しくチェックされる側になります。 

 

これに対して、「破産管財人」は、全ての債権者の利益のために行動する立場であり、また、裁判所とタッグを組んで適正な手続を行う立場です。 

 

ですから、破産管財人に誰を選んだら良いか判断するのも、各地方裁判所なんですね。 

 

その点で、弁護士が破産に関わる場合には、①申立代理人として関わる場合と、②破産管財人として関わる場合の全く異なる2つがあります。 

 

①申立代理人は「破産者」のために(自己破産の場合)、②破産管財人は「全ての債権者の利益」のために仕事をすることになるのです。 

 

ただ、破産管財人の場合の「全ての債権者」という言葉が微妙で分かりにくい面があります。

 

これは、全ての債権者の利益を考えるけれど、ある一部の債権者の味方には決してならないということなんです。 

 

ですから、抜け駆けで返済をしてもらった債権者がいると、破産管財人はそれを訴訟などで取り戻して、全ての債権者に配当できるようにしなければなりません。 

 

破産管財人が就くような事件では、債権者に破産の進行状況などを報告するために、「債権者集会」というのが裁判所で開かれます。 

 

この「債権者集会」、最近では誰も債権者が来なくて、粛々と手続が行われることも多いですが、「荒れる」場合もあります。 

 

例えば、 

 

① 破産する前に、取引先に経営が危ないことを黙って商品を沢山仕入れて、販売してしまったような場合 

 

② 従業員を働かせるだけ働かせて給与未払いで破産した場合 

 

です。 

 

私が破産管財人になり始めた頃は、「荒れる債権者集会」があると、むしろ、「何とかしてやろう」とやり甲斐を感じていました。 

 

債権者集会で債権者から追及を受けることを前提に「どう切り抜けてやろうか」と十分な準備をすることが仕事だと思っていたのです。 

 

しかし、ある程度経験を積むと、債権者集会で荒れないためには事前に何をしておけば良いのかを考えるようになりました。 

 

そのためには、債権者集会の前に、大きな不満を持っている債権者や従業員に対しては、個別に状況を説明して、破産手続への理解を求めるという方法に切り替えました。 

 

従業員については、未払い給与について、立て替えて支払ってくれる機関があることを説明して、その手続の手伝いをしたりすれば、私自身を信用してくれるようになります。 

 

債権者集会で荒れるよりは、適正でありさえすれば、早く処理した方が債権者全体の利益になります。 

 

配当がもらえるケースでは、わずかでもお金が回収できます。 

 

配当が無い場合でも、経営者だったら不良債権について、早めの損金処理が出来た方が良いでしょう。

 

それで相手に納得していただければ、債権者集会にすら来なくなります。 

 

そういう意味では、破産管財人という仕事をより良くするためには、ある程度経験を積んで、押さえ所をつかんでおく必要があると言えます。 

 

私が破産管財人をやっていて困るのは、破産した方が「自分の世話をしてくれる人」と勘違いすることです。 

 

私は、破産管財人になった時には、破産した方にはしつこく「私はあなたとはいわば敵対関係にあるんですよ」と必ず伝えるようにしています。 

 

でも、どうも余り怖くないと思われるらしく、破産した方が本来私に頼むべきでないことまで頼まれて、断るのに苦労することが多いです。 

 

こういう時だけは強面の迫力ある弁護士がうらやましく思えてしまいます。 

 

とはいえ、私が強面をしてもただの「変な顔の弁護士」になってしまうので、不可能でしょうね・・・

 

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