「体においしい魚の便利帳」
という本をアマゾンで買いました。
「お魚マニア」ではなく、「お魚知らず」を何とかしようと思ったのです。
2年ほど前から、漁業関係について継続的に仕事として関わっているのですが、もともと狩猟本能ゼロの私です(原始時代なら飢え死にしていますね。)。
釣りなどの趣味も、縁遠い世界で、魚の知識がほとんどありません。
でも、仕事で色々な魚の種類や食べ方などを聞いていると、「これは知っておいて損はないな」という気持ちになってきました(魚を食べるのは好きなので)。
もちろん、漁師さんと世間話をすることも多いので、漁師さんの最低常識レベルには魚を知っておかなければいけないと痛感したこともあります。
さすがに、集中して読書をするというところまでは行きませんが、夕食前などちょっとした時間にパラパラと見るようになり、大分、知識もましになってきました。
例えば、カジキが静岡沖でも結構とれて、しかもマグロのような美味しさがあるということを初めて知りました。
自分の知らない世界を広げてくれるのも、仕事をやっている良さですね。
さて、仁川アジア大会の水泳会場でカメラを盗んだとして、韓国の仁川地方裁判所で窃盗罪で審理されている冨田氏について、28日(木)に有罪判決が下されましたね。
求刑通りの100万ウォンの罰金ということですから、裁判所は全面的に犯罪行為を認定したことになります。
100万ウォンというと日本円では、11万円程度ですから、日本の窃盗罪で考えてみても、比較的軽い判決です。
日本で、日本人が数万円のカメラを盗んで、全面否認すれば、28日の判決の日まで勾留されて、執行猶予付きの懲役刑となるのが普通でしょう。
ただ、仮に被告人が韓国のアジア大会の選手だったとすれば、やはり韓国の国民感情に配慮しておそらく、そこまで徹底的に勾留せずに帰国させると思います。
判決も罰金刑かもしれません。
ですから、仁川地方裁判所も、日本の国民感情を配慮した判断をしたのだと思います。
冨田氏は、「納得できない」と改めて無罪を主張した上で、「控訴するかどうかは弁護士と協議して決めたい」ということらしいです。
こんな時、被告人と弁護士との間ではどんな打ち合わせがされているでしょうか?
「先生、本当は(窃盗を)やっているんだけど、控訴した方がいいでしょうか?」
などという打ち合わせがされているのではないかと疑われている方もいるかもしれません。
でも、そのようなケースは非常に少ないです(全く無いとは言い切れませんが)。
このような私選弁護のケースでは、冨田選手の口から弁護士に説明されることは、やはり
「先生、私は本当に窃盗などやっていないんです。」
という言葉だと思います。
そして、冨田氏が自分で選んだ私選弁護人なのですから、当然、冨田氏の供述を全面的に信じて無罪を勝ち取ろうとします。
もっとも、全面否認事件の場合、マスコミで皆さんが聞いている事実関係と被告人が弁護人に言っている事実関係が同じ場合と、ズレがある場合があります。
私の経験上だと、弁護人からみて
「この被告人本当はやってるとしか思えない。」
という場合には、相当言っている事実関係や言い訳の内容がおかしいことが多いです。
ですから、弁護人が、被疑者・被告人の言っていることを、そのままマスコミに言ったら、「弁護人がグルになっている」と世間から袋だたきにあってしまいます。
ただ、そういう事態が起きるのは国選弁護人のケースがほとんどです。
なぜなら、私選弁護の場合には、そもそも、自分が非常に疑っている人の弁護については、「私の弁護方針と合わない」と言って断ることができるからです(特別の紹介ルートでない限り)。
しかし、国選弁護の場合、選任されて初めて被疑者・被告人に会いに行くことや、自分が勝手に辞めることができないことから、自分の弁護方針と違う事件に当たってしまうことがあるんですね。
そのため、国選弁護でそのような事件にあたってしまった場合、私は、徹底的に被疑者・被告人を説得します。
おそらく検察官と同じくらいの勢いで、接見室内で被告人・被疑者の供述の不自然な点をついて、場合によっては大喧嘩してきます。
良くそれで、被疑者・被告人の親族から
「先生が自分を信じてくれない」と子供が言っている!
などとお叱りを受けることがあります。
それでも、私自身が納得しないと、全力で弁護できないので、裁判の日の1週間くらい前まで説得を続けます(裁判員裁判では、もっとずっと前に説得をあきらめなければ間に合いませんが。)。
それでも、被告人が最後の最後まで否認し続けた場合には、やむを得ず、否認の主張をできるだけ不自然に見えないように整理して、法廷で弁護活動をします。
法廷だけ見ている人たちには、その前に接見室内で長期間被告人と喧嘩し続けてきた弁護人の姿は見えていません。
弁護人は
「悪い人を守ろうとする悪役」
にしか見えないかもしれません。
でも、それは国選弁護ではやむを得ない事態なんですね。
被告人の意思に反して弁護人が罪を認めたりしたら、弁護士会からの懲戒処分で弁護士の資格を失いかねません。
もっとも、今回の冨田氏のケースは、おそらく私選弁護でしょうから、冨田氏から事実関係を聞いて、
「自分の弁護方針上、特に問題はない」
と判断して弁護しているはずです。
ですから、さすがに冨田氏と弁護人の間の打ち合わせは、冨田氏の無罪主張を軸に行われていると思います。
それを不自然と感じるかどうかは、報道されている事実関係だけからは分かりませんので、私自身が評価することはできません。
もちろん、日本の代表選手だった訳ですから、無罪を信じたい気持ちはあります。
しかし、今まで報道されてきた事実関係や、経緯を見ていると、仁川地方裁判所の判断を批判することもできないという微妙な心理です。
皆さんが裁判員になったら、その判断をする立場になりますので、色々な側面から事実を見る習慣をつけておくと、いざという時に良いかもしれませんね。
刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。