介護施設でのトラブルが増えています

最近、温かかったり、寒かったりと、寒暖の差が激しいです。

 

皆様も、体調には十分にお気をつけください。

 

花粉症の私にはつらい季節のまっただ中です。

 

コンタクトもすることができず、メガネをかける毎日です。

 

本当に「目玉を取りだして、シャワーで徹底的に洗いたい」気分です(笑)

 

さて、私は、県庁にいた頃、福祉の仕事を最初に経験しました。

 

その頃は、本庁だったので当時の厚生省から補助を受け、県自体の事業を行ったり、市町村への事業委託や補助金の交付の仕事をしていました。

 

その知識を買っていただいたのか、弁護士になってからも、社会福祉法人が法人として高齢者の後見人になるという制度の立ち上げを、お手伝いしたことがあります。

 

その制度を開始する前の1年間、そこの部門の非常勤の所長としてアドバイスをしました。

 

そのため、福祉事業に関しては、普通の弁護士より経験が多いとは思います。

 

さて、最近、高齢者の介護施設でのトラブルが非常に多くなっています

 

例えば、先月には東京都大田区の有料老人ホームで食中毒患者が出たと報道されました。

 

入居者65人中16人が集団食中毒になり、1名が死亡したとのことです。

 

そのホームの調理担当者からノロウイルスが出たことも有り、東京都は給食が原因だと判断したそうです。

 

有料老人ホームというと、相当高額で、余程老後の資金を貯めておかなければ入れないというイメージです。

 

それなのに、どうして、一番危険な食べ物の調理について指導管理する費用をしっかりと使わなかったのか、報道からは明確ではありません。

 

もし、高額の入居費を受領しながら、人件費を節約して、職員に過酷な労働を強いていたのであれば、ひょっとしたら、その調理担当者も被害者かもしれません。

 

さて、この亡くなられたご遺族から、ご依頼を受けた場合、弁護士だったらどんな戦略を練るでしょうか?

 

私だったら、調理担当の介護職員に高額の賠償金を支払えるとは思えません。

 

そこで、施設を経営する会社を請求の相手とすると思います。

 

もちろん、責任は「契約した介護契約の内容を守らなかった」という債務不履行を理由として損害賠償請求です。

 

従業員のミスだったら、運営会社には請求できないんじゃないの?

 

と思われた方もいるかもしれません。

 

でも、運営会社が、事業を展開するために入居者又はその親族と契約をして、その事業を行うために介護職員を雇っているのです。

 

これを、民法では「履行補助者(りこうほじょしゃ)」と言って、履行補助者である介護職員のミスは、当然に使用者の責任となるのです。

 

もちろん、運営会社自体の監督責任債務不履行の根拠とすることもできるでしょうし、それも合わせて主張していくと思います。

 

そして、事件をすすめていく中で、「調理担当の職員がノロウィルスの感染を知って厨房に入ったという個人的なミス」と、「十分な衛生管理をワタミの介護㈱が行っていなかったという監督のミス」のとどちらが立証しやすいか検討していくことになると考えます。

 

更に、もう一つ考えられる法律的な主張には、交通事故のケースと同じく、「違法な行為をして他人に損害を与えた」という責任(不法行為責任)の主張も検討するでしょう。

 

その中で、事件を進めながら、事実が判明してきた時点で、メインとなる主張に絞っていくことになるでしょう。

 

そのため、弁護士が事件に着手する時には、たとえ内容証明郵便1本を送るだけでも、判決(場合によっては上級審の判決)までにらんで複数の主張の取捨選択を行っていく訳です。

 

ここで、法律や判例を死ぬほど勉強したというだけでなく、裁判を数多く経験しているという点が、弁護士以外の人達との決定的な違いです。

 

基本6法を十分に理解して、何千件もの判例を勉強した上で、何百件もの裁判をやっている素人とか考えられないですもんね(笑)

 

弁護士が、あっさりと言っているように見える「この方針で行きましょう!」という言葉の裏には、判決をにらんでの多数の方法の取捨選択があるんですね。

 

以前から、何の資格も裁判の経験も全く無い「自称コンサルタント」が弁護士の領域にも入ってきています。

 

法律の判断が必要な紛争で、ご自分が大きな損害を負っていたり、早期の解決が大切な事件を、「コンサルタント」に任せることは相当なリスクを招きます。

 

また、最近は「ビジネスになる」と言われて怪しい「相続コンサルタント」が雨後の竹の子のようにネット上で増えています。

 

実は、私の所にも、様々な提携依頼の電話が来ることもあります。

 

でも、全て、私は断っています。

 

知り合いでもない「自称コンサルタント」からの紹介など、怖くて受けられません。

 

ひょっとしたら、弁護士法で禁止されている紹介料を弁護士以上の額で取っているかもしれません。

 

また、私の感覚では、そのような怪しいコンサルタントと提携しなければ仕事が無いような弁護士や税理士は、自分で勉強して仕事を開拓していく意欲や能力にも問題があるように思えます。

 

皆様も、大切な事件であればあるほど、慎重な判断をしていただければと思います。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 日常生活の法律問題

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