「イヌ派」、「ネコ派」って良くいいますよね。
私が、前回、ネコの話ばかり書いてしまったので、私が完全なネコ派だと思われた方も多いかもしれません。
でも、実は、同じくらいイヌも大好きです。
現在も、12才のラブラドールレトリバーと暮らしており、このラブ(メス)も、私の言うことしか聞きません。
他の人の指示は怒鳴りつけられても聞きませんが、私の言うことは普通の声で指示するだけで、しっかりと聞いてくれるので、「違うイヌ?」と獣医さんや散歩仲間に冗談混じりに言われます。
もちろん、私のもともとの能力などではなく、私が必死で本を読んで調べたり、「飼い主のしつけ教室」へ通って努力した成果ですが・・・
さて、犬に関して、6日の金曜日、大阪地裁で出された判決が新聞に掲載されていました。
事案は犬同士のトラブル。
シェパードの飼い主が駐車場に鎖でつないでいたところ、その鎖がはずれてシェパードは路上に飛び出して、散歩していたチワワに突進!
シェパードが噛んだりはしなかったようですが、その直後、チワワは急激な興奮による心不全で死亡してしまったそうです。
民法では、動物の占有者=動物を保管する者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を原則として負うとしています。
その上で、動物占有者がしっかりと管理していたことを立証した場合だけ責任を免れるとして、飼い主に重い責任を定めています。
ですから、この場合も、鎖がはずれるような管理をしていた飼い主は、しっかりとした管理をしていなかったとして損害賠償の責任を負うのです。
なお、この飼い主のシェパードは数日前にも逃げ出していたようです。
家族にとっては可愛い犬なのでしょうが、他の犬に突進していく性格の犬であれば、その性格を考慮して、きめ細やかな飼い方をしてあげないと、愛犬も可愛そうです。
これに対して、チワワは15才と高齢だったため、興奮による心不全も因果関係があると判断されたのでしょう。
この判決で、法律的な視点から1点、犬好きの視点から1点、注目するところがありました。
一つ目の法律的な視点は、損害の内容です。
今までの判決の原則的な理屈では、物を壊されても、損害の内容はその物の時価であり、慰謝料は発生しないはずです。
更に、物の価値は時価で図るので、例えば自動車であれば、耐用年数や現実の取引価格を基準にします。
これをチワワに当てはめると、小型犬の寿命年齢である15才のチワワは、自動車で言うと耐用年数を経過しており、これをほしがる人もいないでしょうから取引価格も無く0円ということになります。
もちろん、愛犬・愛猫を機械と同じように扱うことには、私も大きな抵抗はあります。
でも、牛や豚を何の躊躇も無く殺して、殆ど毎日食べている私たちが、「動物は物ではない!」と偉そうに言えるのでしょうか?
私としては、やはり犬や猫の価値自体は物として計算するしかなく、本来の損害(主観的価値)は飼い主の慰謝料として換算すべきだと思います。
つまり、牛・豚や他人の犬よりも、自分の犬の方が可愛いのは当たり前ですから、自分の愛犬や愛猫が怪我を負ったり、死亡すれば、精神的に大きな傷がつくのが普通です。
社会通念から言って、自動車を事故で廃車にした時とは比較にならない精神的傷害を負うでしょう。
その意味で、今後、特に犬の事故が多いですが、死亡した犬の飼い主の慰謝料は、もっと高額にすべきだと思います。
不貞行為で夫や妻が傷ついた精神的傷害を、婚姻年数や不貞により夫婦が離婚したか、などの個別の客観的事情から判断していますよね。
とすれば、死亡した犬の飼い主の心の傷も、
① 一緒に暮らした年数
② 室内犬か否か
③ 毎日の散歩の回数や時間
④ 飼い主の収入に対する犬にかけていた費用の割合
など、客観的な事実から精神的損害も十分に計ることができると思うのです。
この判決では、報道によると葬儀費を含む約20万円+弁護士費用2万円の合計約22万円が損害とのことです。
こういう場合、弁護士費用は、損害額の1割程度ですから2万円は当然の額です。
そして、慰謝料18万円で、葬儀費用を加算して20万円とのことです。
とすると、やはり、葬儀費用は業者に依頼して2万円程度でしょうから、チワワ自体の価値は寿命年齢に来ているので、ほぼゼロ円~数千円だと積算したのでしょう。
その上で、民法上「物」と扱われる犬について、その飼い主に相当額の慰謝料を認めたもので、画期的だと思います。
ただ、イヌ好きの個人的な感覚ですが、15年も一緒に暮らしてきたチワワの死亡については、高額で売っているチワワよりも確実に多い額、つまり30万円~40万円程度にして、
「買主の心の傷は販売価格より確実に大きい」(新しいイヌを購入すれば済むという問題ではない)
という性質を明確にしても良いのでは?と思いました。
次に、犬好きのもう一つの視点で気になったのは、判決が「体格差のあるシェパードに突進されたのは脅威だった」としている箇所です。
「犬の心が読めるのか!?」という突っ込みは置いておいて、過去の歴史から言われているチワワの特性から考えてみましょう。
チワワの飼い主さんいらっしゃいますか?
私が昔調べた所では、チワワの多くは相当気が強くて、大型犬にも向かっていく性格のものが多いと書いてありました。
とすると、15才のチワワも興奮したのは事実でしょうが、シェパードに立ち向かっていって力を使い果たしてしまったのではないでしょうか?
シェパードも、本当に獰猛な性格なら、一発でチワワをかみ殺しています。
でも、接触しただけですんでいるのは、チワワの最後の気迫に押されて立ち向かえなかったように思えます。
最後まで、強気を捨てなかった15才のチワワに拍手です。
「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。