何年か前から、アメリカのTVドラマ「メンタリスト」にはまっています。
心理描写と主役のサイモン・ベイカーの演技が絶妙で、ついニヤッとしてしまいます。
日本では、2010年の5月からスカパーで見ることができていますが、やはり字幕が良いとなるとDVDですね。
もっとも、アメリカ法でも証拠としての能力が無くなるような違法捜査を行っている時には、ついつい「そこで止めとけば・・・」とつっこみを入れています。
さて、最近、最高裁で、「実の父親か、結婚時の父親か」が争われた事件がありましたね。
最高裁が、DNA型鑑定で、99.99%実の父親とされたのに、それを認めなかったという判決です。
TVや新聞・ネットでも話題になっていました。
色々と議論がされていますが、私は自分自身の視点から、この判決を分析させてもらおうと思います。
この裁判の前提事実はこうです。
Aさん(夫)は、Bさん(妻)と平成16年に結婚しました。
Aさん(夫)は、平成19年から単身赴任をしていましたが,単身赴任中もBさん(妻)のいる自宅に月に2,3回程度帰っていました。
ところが、Bさん(妻)は、平成19年にDさんと知り合い(単身赴任直後ですね。),Dさんと親密に交際するようになりました。
でも、Bさん(妻)は,不倫の傍ら、A(夫)さんと共に旅行をするなどして、A(夫)さんとBさん(妻)は夫婦として普通に生活していました。
Aさん(夫)は、平成20年に、Bさん(妻)から妊娠しているとの報告を受け、Bさん(妻)は平成21年には、Cさん(子)を生みました。
当然、自分の子だと信じたAさん(夫)は、Cさん(子)の通う保育園の行事に参加するなどして、Cさん(子)を自分の子としてしっかり育てていました。
ところが、平成23年になって、Aさん(夫)は、Bさん(妻)とDさんとの不貞行為を知ってしまったんですね。
当然、夫婦仲は悪くなり、Bさん(妻)は,その年中に、1才と数ヶ月になるC(子)さんを連れて自宅を出て、A(夫)さんと別居しました。
更に、Bさん(妻)は、その年中にCさん(子)と、Dさんとその連れ子と同居するようになりました。
Cさん(子)が、Aさんの所を離れたのがまだ1才数ヶ月だったため、まだ幼いCさん(子)は、血のつながりのあるDさんを「お父さん」と呼んで、特に問題なく順調に成長しています。
そして、Dさん側で、平成23年に私的に行ったDNA検査の結果によれば,DさんがCさん(子)の生物学上の父である確率は99.99%であるとされていました。
そこで、東京高裁では、次のようにAさん(元夫)とCさん(子)との親子関係を否定しました。
本件においては、上記のDNA検査の結果によれば、AさんがCさん(子)の生物学上の子でないことは明白です。
また、現在,Cさん(子)は、BさんとDさんに育てられ,順調に成長しています。
とすれば、Cさん(子)が、AさんとBさんの結婚中に生まれた子だとしても、Aさんが父親であるとの推定(嫡出推定=ちゃくしゅつ・すいてい)が及ばない特段の事情があるものと見るべきだということです。
確かに、子どもの今後の生活を考えたら、実の父母と一緒に問題無く暮らしている以上、東京高裁の判決の方がもっとものように思えます。
そうすると、逆の結論を出した最高裁の判決については「裁判官ってやっぱり法律を四角四面に適用する」という批判をしたくなります。
実際に、この最高裁の判決を問題視するような報道も見ました。
でも、最高裁の裁判官って、全てが裁判官としての実務を積んできた裁判官ではないんですね。
今回の最高裁の第1小法廷でも5人の裁判官のうち、裁判官経験があるのは2人だけで、残りの3人は、元は裁判官ではありません。
では、それぞれの裁判官は、東京高裁の判決に対して、どのような判断をしたのでしょうか?
次回、この視点から広げて考えていきたいと思います。