街もすっかりクリスマスの風景ですね。
私の事務所のある鷹匠商店街においても、各店舗で相談しあってポインセチアを置くようにしているようです。
私の事務所に入る所の階段にも、大家さんがポインセチアを飾っていただいています。
もっとも、私の事務所内は、世間の行事とは余り関係無く、何時もと同じ風景です。
仕事の性質上、「世間の行事どころではない」という方からのご相談が多いので、敢えて事務所内は、余り季節感や世間一般の行事の雰囲気を出さないようにしています。
さて、今回は相続のお話です。
亡くなった方が財産よりも遙かに多い借金を残してしまった場合、本来、相続する方(相続人)が、「一切の財産も借金も相続をしない」という手続をとることができます。
「相続放棄」という手続です。
この相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に手続を行わなければなりません。
そして、相続開始を「知った時」を立証するのは大変なので、私は何時も、亡くなられた日から3ヵ月以内に手続をするようアドバイスしています。
手続としては、相続放棄申述受理の申立を管轄の家庭裁判所に申し立てていくことになります。
ここで時々問題になるのが、相続放棄をするつもりだった相続人が、うっかりと亡くなった方の預金を死亡後に下ろしてしまった場合です。
この下ろしたお金を、相続人が自分の生活のために使用していたりした場合には、相続放棄はできなくなります。
なぜなら、亡くなった方の借金は相続しないけれども、財産だけは自分の生活費に使わせてもらうというのは虫が良すぎる話だからです。
では、相続人が自分のためではなく、亡くなった方の葬儀代を支払うために預金を下ろしてしまった場合はどうでしょうか?
これにも争いがありましたが、現時点では、社会通念上妥当な額の範囲であれば、葬儀費用に使用しても相続放棄をすることはできるとされています。
裁判例で問題となったケースは、相続人が亡くなった方の名義の預金を死亡後に解約して、亡くなった方の墓石購入費に使用したというものです。
確かに、墓石購入を含む葬儀行為は、死亡した方が執り行うものではなく、通常は遺族の誰かが「喪主」となって執り行われます。
とすると、被相続人の財産は借金の支払いのために残しておき、「喪主」が全ての費用を負担すべきようにも見えます。
しかし、亡くなった方に借金があるかどうかを知らない場合、遺族が亡くなった方の預金を利用して仏壇や墓石を購入することは自然な行動と言えます。
また、遺族が購入した仏壇及び墓石が社会的にみて不相当に高額のものと言えない場合には、購入を理由に相続放棄を否定するのは常識的な判断とは言えません。
そこで、このような場合には、仮に遺族が、仏壇や墓石の購入のために亡くなった方の預金を解約していても、その後に相続放棄はできるとされています。
ただ、無制限に認めると、葬儀費用と偽って、自分の懐にお金を入れようとする相続人が現れる危険があることから、社会通念上妥当な額の範囲にしばりをかけているということなんですね。
相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。