離婚調停では、もともと夫の方が不利? ~ 夫の戦略

夫の皆様に、まずお伝えしなければいけないことがあります。

 

離婚をするにあたって、夫は「とにかく不利」です。

 

何が不利かというと、

 

妻が子供と連れて無断で出て行ったのに、

① 妻と子の生活費は支払わなければならない

② 子供の親権をとることは極めて難しい

③ 夫婦喧嘩で、行き過ぎた言動がちょっとでもあると、すぐにDV夫のレッテルを貼られてしまい、子供と全く会えなくなったり、多額の慰謝料を請求される

④ 子供と会えないのに、養育費強制的に取り立てられる

⑤ 財産分与では大抵、夫が多額の金銭を妻に払わなければならない

などなど、きりがありません。

 

ですから、弁護士にとって、夫側に立つ場合には、訴訟で言うと、被告側に立つような気持ちで、「どこまで守れるか」という心理になることが多いです。

 

そこで、夫が最低限知っておくべき、自分を守る方法を考えていきたいと思います。

 

まず、子供親権についてです。

 

子供が小学校の低学年以下の場合には、母親が子供を虐待している明確な証拠でも無い限り、日本では親権を取ることは難しいです。

 

逆に、未成年でも15才以上の年齢であれば、子供の意思が尊重されることが多いです。

 

ですから、父親にとって、実際に親権を争う場面というのは、子供が10才~14才くらいで、子供自身が「お父さんと暮らしたい」と希望している場面くらいです。

 

あまり、そのようなご相談を受けることは少ないので、現実の世界では、そのようなケースは、子供の意思を尊重して、父母で話し合って解決しているのでしょう。

 

やはり、弁護士の所に父親が相談に来られるケースとしては、「母親(妻)が、ある日黙って子供を連れて出て行ってしまった!」というものが多いのです。

 

この場合、夫は、親権を守るために何ができるでしょうか。

 

まずは、「離婚しない」という選択をすることができます。

 

夫に浮気・暴力・長期間の別居期間などの離婚事由が無い限り、裁判でも離婚は認められません。

 

そして、婚姻中であれば、共同親権が認められます。

 

DV家庭内暴力)があるようなケースでない限り、子供に関する権利を制限されることはありません。

 

これに対しては、妻側は、当然、婚姻費用請求してきます。

 

父親(夫)としては、子供と会えないのに、妻と子供の生活費を払わなければならないという理不尽な期間が続きます。

 

いわば「兵糧攻め」で、離婚と親権を勝ち取ろうとする妻の戦略です。

 

これに対しては、婚姻費用それ自体についても、その金額を争うことになりますが、それと同時に面会交流の調停申立を早期に行う必要があります。

 

ひょっとすると、面会交流は、親権をとれなかった父親が離婚後に初めて請求できるものと誤解している方もいるかもしれません。

 

確かに、民法766条1項は「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者父又は母と子との面会及びその他の交流面会交流は・・・その協議で定める。」と定めています。

 

そして、この規定は、調停離婚裁判離婚にも適用されます。

 

そうすると、この条文だけ見ると、離婚をする時に、その後の面会交流について定めるということになりそうです。

 

しかし、親権や監護権を失った父親が、面会交流を請求できるのに、親権を持っている父親が面会交流すら請求できないというのは不均衡です。

 

そこで、最高裁は、上に書いた民法766条を、離婚前のケースにも類推適用して、離婚前の父母の面会交流の請求を認めています

 

母親が面会交流を拒絶している場合、調停では、家庭裁判所調査官が入って調査するなど、子供と会えるまでに長い期間がかかります。

 

ですから、父親としては、離婚を拒絶するとともに、即座に面会交流の調停を申し立てて、母親(妻)に対抗する必要があるんですね。

 

もっとも、面会交流を求めるといっても、合意する内容をしっかりしないと、調停は成立したけれども、結局、実際には子供に合わせてもらえず、調停調書や審判書がただの紙切れになってしまうおそれがあります。

 

今度は、面会交流調停でどのような調停条項を定めることが必要か考えていきましょう。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

弁護士ブログ村→にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ うれしい顔

カテゴリー: 離婚のお話

コメントは受け付けていません。