もう梅雨入りの季節ですね。
あっという間に1年が過ぎていきそうです。
久しぶりのブログ更新です。
自動車で人身事故にあってしまった場合、被害者の方は、加害者へ損害賠償の請求ができますよね。
加害者やその加入している保険会社が誠実に対応してくれれば、スムーズに問題の解決ができます。
でも、加害者が不誠実だったり、保険会社の担当者が不当な値切りをしてくるような場合には、被害者側としても争わなければいけません。
このような場合、被害者側は、何を証明する責任を負うのでしょうか。
言い換えると、裁判で、自分の被害を裁判官に認めてもらうためには、被害者はどのような事実を証明しなければならないのでしょうか。
まず、民法の原則によると、
① 加害者の故意・過失
② 加害者の行為の違法性
③ 損害の発生とその額、
④ 加害者の違法行為と損害結果との因果関係
を、被害者が証明していかなければなりません。
しかも、損害賠償の請求をできる相手方は、不法行為を行った人(多くの場合運転手)に限られます。
でも、交通事故の場合、被害者は加害者側の事情を知らないことが多いので、加害者の故意・過失を証明することは、簡単ではありません。
たとえば、加害者の前方不注意で事故が起きたとしても、加害者が「しっかり前方は見ていたのに、被害者の急停止が原因で事故が起きたのだ。」と主張したとします。
この場合、加害者の前方不注意を被害者がすべて証明しなければならないとすると、被害者の負担が重すぎます。
そこで、法は、被害者救済のために、自動車損害賠償保障法(自賠法)という法律によって、証明責任を、被害者から加害者に移しています。
自賠法では、原則として、自己のために自動車を運行の用に供する者は、他人の生命身体を害した場合には、原則として損害賠償責任を負うと定めています。
そして、加害者の方で、自分に故意・過失がなかった場合には、それを証明すれば責任を免れることができると定めています。
このように、証明する責任を加害者に移すこと(これを「立証責任の転換」と言います。)によって、被害者を保護しようとしているんですね。
先ほどの例で言えば、被害者は、加害者の故意・過失まで証明する必要はなく、「加害者の運転する自動車によって、どの程度の怪我をしたか」だけを証明すれば良いことになります。
加害者は、これに対して、自分には故意・過失がないこと、つまり前方をしっかりと見ていたことを証明していかなければ責任を負うことになります。
このように、自動車事故での損害が深刻なことや、事故が多いことから、法は証明責任の点でも被害者を保護しようとしているんですね。
交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。