昨日から今日にかけては各地で悪天候だったようですね。
静岡はやはり雪はふらず、雨でした。
比較的暖かかったと思います。
さて、交通事故のお話です。
実際にあった裁判例なんですが、妊娠4~5週間の妊婦の方が、乗用車を運転していて停車中に、原付自転車に衝突されてしまいました。
この事故により、妊婦さん自身は、大けがというほどではありませんが、頸椎捻挫・腰椎捻挫でした。
ただ、怪我の程度について捻挫か、骨折かは、外から見ただけでは分かりません。
この症状を確認するためには、レントゲン写真を撮る必要がありました。
そこで、レントゲン写真を撮ったのですが、それによって障害を持った子が生まれるという不安を抱いて、その妊婦さんは堕胎をしました。
では、この堕胎費用は交通事故の損害に含まれるでしょうか。
堕胎は、妊婦さん自身が決めることですから、交通事故とは直接の因果関係はなさそうにも思えます。
また、レントゲン写真を撮影したからといって、障害を持った子が生まれるとは限りませんし、障害を持った子なら堕胎しても良いという理屈も変な気がします。
しかし、この裁判例(京都地裁の判決)は、堕胎費用も損害に含まれるとしました。
事故がなければ、レントゲン照射は不要だったことを考慮したものだと思われます。
もっとも、これは一地方裁判所の判決ですし、現在の医学知識を前提とすると、必ずしも妥当しない可能性はあるとは思います。
おそらく、裁判になった場合には争点にはなるでしょう。
なお、交通事故の衝撃で流産してしまったような場合には、当然にその治療費や相当額の慰謝料を請求できるでしょう。
もっとも、この事故の場合、妊婦さん自身が堕胎を選択しているので、精神的損害については認められない可能性があります。
仮に認められたとしても、過去の裁判例を見る限り、残念ながら、慰謝料は、その妊婦さんが思うほどの金額にはならないことが多いです。
私も、慰謝料の請求をする側に立った場合には、過去の裁判例を調べて、がっかりすることも多々あります。
被害状況について、間接的な事実であっても、客観的な事実を積み重ねて、目に見えない「精神的な痛み」を詳しく証明していくしかないとは思います。
交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。