明日、水曜日は朝から法律相談と遠方の裁判の連続なので、火曜日にアップします。
裁判員裁判が違憲かどうかについて、今までご説明してきた争点の他に、あと二つの争点があります。
今回は、その二つの争点についてご説明したいと思います。
まず、憲法76条3項は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権をおこなひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と規定しています。
ところが、裁判員裁判では、裁判官は裁判員が賛成しなければ、裁判官だけで判決を下すことができません。
とすると、「憲法及び法律」以外のものに拘束されることになり、憲法76条3項に反しないかが問題となります。
最高裁はこれに対して、次のような理屈で同条項に反しないとしています。
裁判員裁判に関する法律は以前に述べたとおり、憲法が一般的に国民の司法参加を許容しており、合憲だと考えられます。
とすると、裁判官がケースによっては自分の意見と異なる結論に従わざるを得ないとしても、それは法律が定めた裁判員制度に拘束される結果であり「法律」に拘束されるものとして、同条項に反しないということです。
皆さんはどのように考えられるでしょうか?
裁判員裁判の合憲性を争っているのに、裁判員裁判に関する法律が合憲であることを前提として、結論を出すのは結構強引な気もします。
次に、二つ目の争点ですが、憲法は18条で「犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と定めています。
とすると、国民に強制的に裁判員としての職務を負わせることは、同条の「苦役」にあたるものとして違憲なのではないかという問題が生じます。
最高裁は、裁判員裁判が国民に一定の負担が生じることを認めつつも次のような理由で同条に反しないとしています。
裁判員の裁判は、司法権の行使に対して国民を参加させるものであり、参政権と同様の権限を国民に付与するもので「苦役」ということは適切ではありません。
更に、裁判員法は、裁判員となることを辞退できる事由を類型的に定め、また、個別の事情を勘案して辞退することも認めています。
そして、出頭した裁判員には旅費、日当等の支給により負担を軽減するための対応がなされています。
これらの事情を考えれば、憲法18条の「苦役」とまでは言えないという結論です。
裁判員制度の運用の仕方にもよるとは思いますが、確かに、現在の運用では、「苦役」とまでは言えないのかなとは思います。