10月に入って、朝晩は大分涼しくなりましたね。
クールビズも終わってしまい、身軽な服装が好きな私としては、ちょっと寂しい感じです。
さて、今回も、「行政と私たちとの間に起きた事件に、民法などの私法が適用されるのか」という問題を考えたいと思います。
「法律を作った趣旨は何だったのか」ということから考えていく発想を持って頂くと、色々な法律の解釈に役に立ちます。
今回もそのような発想で事案を検討していきましょう。
陸上自衛隊員だったAさんは、車両を整備中に、同僚の運転する大型自動車にひかれて即死してしまいました。
Aさんの両親であるXさんたちは、国に対して安全配慮義務違反を理由に、損害賠償請求訴訟を起こしました。
会計法30条は、金銭の給付を目的とする国の権利及び国に対する権利については、5年の消滅時効期間を定めています。
さて、この損害賠償請求権について、5年の消滅時効期間が適用されるでしょうか。
それとも、民法が適用されて10年の消滅時効期間となるのでしょうか。
まず、会計法の趣旨から考える必要があります。
会計法が、民法よりも短期の消滅時効期間を定めたのは、国の権利義務を早期に決済するという行政の便宜を図ったものです。
では、この趣旨から考えて、今回の事例について、会計法30条が適用されるか考えてみてください。
国の権利義務を早期に決済する必要があるのは、大量に反復・継続して権利が発生するからでしょう。
しかし、このような事故は偶然に発生するものであり、多発するようなものではありません。
また、安全配慮義務違反により損害を被った人の損害を賠償する場合には、相手国であろうと私人であろうと関係ありません。
とすれば、民法を適用して10年の時効期間を定めた方が適切なはずです。
そこで、最高裁の判例は、民法167条1項の適用を認め10年の時効期間を認めました。
ここでも会計法の趣旨を考えて、国と私人の関係に対して、公法である会計法ではなく、民法の適用を認めているということです。