涼しくなってきて、秋を感じられるようになりましたね。
昼間と夜と寒暖の差も激しくなったので、皆様も体調を崩されないようにお気をつけ下さい。
さて、今回から、しばらく行政と私たちの関係について書いていきたいとと思います。
できるだけわかりやすい裁判例を取り上げて、解説をしていきたいと思っています。
私たちと行政との関係を定める法律を、まとめて「行政法」と呼んだりします。
「行政法」という法律は無いのですが、行政手続法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法など、私たちと行政との関係や行政それ自体を定める法律をまとめて「行政法」と呼びます。
行政法を勉強すると、最初に出てくるのが公法と私法を全く別のものとするかどうか(二元論)の問題です。
公法というのは、行政などと私たちとの関係を定める法律、例えば行政手続法などの行政法が典型的なものです。
これに対して、私法とは、私たち一私人同士の関係を定める法律で、民法、商法などをいいます。
例えば、議員さんが市に対して報酬を請求する権利を持っていますが、議員さんはこれを譲渡できるでしょうか。
議員さんと市との関係は行政との関係ですから、本来、公法である行政法が適用され、債権の譲渡に関する民法は適用されないと考えれば、譲渡できないという結論になるでしょう。
最高裁の判例は、譲渡を認めました。
それでは、行政との関係では何でも民法が適用されるのでしょうか。
例えば、生活保護を受給する権利に民法の相続の規定が適用されるのでしょうか。
最高裁の判例は、こちらは相続を否定しました。
生活保護を受給する権利は、その人個人に専属する権利であって、親族であっても相続の対象とならないとしたんですね。
このように、判例は、公法と私法の適用範囲を二分して区別してはいないようです。
それぞれの法律の趣旨や権利の性質を考慮して、行政との関係について、民法などの私法を適用するかどうか考えているようです。
この、法律の趣旨から考えるというのは、法的思考にとって、とても大切なことです。
次回も、法律の趣旨から、公的関係に民法などの私法が適用されるかの裁判例を考えてみたいと思います。