裁判所も夏期休廷期間があるので、その前ということで、調停や裁判の期日がたくさん入っていました。
今週から8月の20日くらいまでは、裁判の期日の点では比較的余裕のある日程になっています。
当事務所もお盆の8月13日からの週は1週間お休みをいただく予定です。
とはいえ、ご相談や打合せ、書面作成などの時間が入っているので、休みにも出てこなければなりませんが・・・
今まで、憲法の問題については書いてきませんでしたが、日本の最高法規(法律よりも上の効力を持っている)ですので、今回からちょっと考えてみたいと思います。
また、この裁判例は、公務員の労働問題とも関連しているという点でも重要です。
ごく最近(今年の1月16日)に出た最高裁の判例について考えてみましょう。
事案を簡単にしてご説明しますね。
公立高校又は公立養護学校の教職員の方が、卒業式で、国旗に向かって起立して国歌(君が代)を歌わなかったり、ピアノ伴奏を拒否しました。
これを理由に、教育委員会から戒告処分や減給処分を受けたという事案です。
まずは、これがどうして憲法の問題となるかを考えなければなりません。
日本国憲法は、思想・良心の自由を19条で保障しています。
つまり、どのような思想をもつか、どのような良心に従って行動するかは、個々人の自由であるのが原則なのです。
この事案でも、教職員の方は、「日の丸」という国旗や「君が代」という歌が、過去の日本の歴史で、戦争の助長など悪い役割を果たしたと考えたようです。
そして、そのような歴史観・世界観を心の中で持つこと自体は、日本の憲法19条で保障されています。
この点については、争う余地はありません。
問題は、公務員が、心の中で思っているだけでなく、法律・規則・学習指導要領に従わない行動をとることまで憲法19条は保障しているかという問題です。
思想・良心の自由といえども、それが心の中にとどまらず、行動として他の人に影響を与える場合には、制約を受けざるを得ません。
憲法は「公共の福祉」(12条・13条)という言葉で、その制約を認めています。
それでは、一部の教職員が、卒業式で、国旗掲揚の時に起立しなかったり、君が代を歌わないと、他の人に影響を与えるのでしょうか。
①卒業式に対する積極的な妨害行為ではない点を重視すれば、他の人には影響を与えないと思います。
これに対して、卒業式で生徒・教員の殆どが起立して歌っているのに、1人か2人の教員だけが座ったままでいる場面を想像してください。
見方によっては、②卒業式の厳かな雰囲気が損なわれるとか、公務員なのに、自分の思想次第では学習指導要領に従わなくても良いということになってしまうのは不都合だとも言えます。
最高裁の裁判例では、教育委員会の戒告・減給処分が裁量を逸脱して違法だという結論を出す場合には、①前者を重視します。
これに対して、教育委員会の戒告・減給処分が裁量の範囲内で適法だという結論を出す時には②後者を重視します。
次回から、両方の結論を出した最高裁の裁判について、それぞれご説明していきたいと思います。
「憲法のお話」のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。