今日の静岡はとても良い天気です。
明日からまた天気が崩れそうなので、今日の晴れを満喫したいと思います。
仕事の方は、今日は午後に2件、ご相談が入っているだけなので、事務所に引きこもり状態になってます。
相談の間に、散歩くらいはしようかと思います。
さて、今回も、引き続き刑事事件のお話をしたいと思います。
ある人が犯罪を犯してしまった場合、犯した結果に対して刑罰を科すには、行為と結果との間に因果関係があることが必要です。
ここでいう「因果関係」があるとは、科学的な関係ではなく、「常識的に見て、その事案を理解できる人のほとんどが関係があると判断する」場合を言います。
因果関係が争われた裁判例を見ていきましょう。
被告人Xさんは、柔道整復師として肩こりや腰痛、風邪の治療などをしていました。
被害者となったAさんは、28才で健康な、建築士です。
Aさんは風邪をひいて37度ちょっとの微熱があるようでした。
そこで、AさんはXさんの医院に診察してもらいに行きました。
実は、Xさんの医院には、Aの両親も10年間ほど前から通院していたので、絶大な信頼をXさんによせていたんですね。
Aさんに対して、Xさんは次のような指示を出しました。
「熱が高くなれば風邪の菌を殺すことができるから、できるだけ熱を高めて汗を流すようにしなさい。」
高熱が出た時には、水分を十分にとることと、解熱するのがセオリーですよね。
Xさんの指示は、常識的にもちょっとおかしなものでした。
ところが、Xさんを信頼していたAさんは、言われたとおりに、締め切った部屋で布団をかけて熱を上げるようにしてしまいました。
Aさんの熱は37度から上がり、脱水症状になり、ついには42度にも上がって、肺炎を併発して死亡してしまいました。
ここでのXさんの行為は、誤った指示により人を死亡させたとして、業務上過失致死罪にあたる可能性があります。
実際裁判でも、第一審、第二審とも、業務上過失致死罪の成立を認めました。
そこで、Xさんは、「自分の指示とAさんの死亡との間には因果関係が無い」として争ったんですね。
つまり、「Aさんが死亡したのは、Aさんが自分で締め切った部屋で布団をかけたり、、水分を十分にとらなかったりしたことが原因だから、自分の指示とは関係ない。」
「Aさんの死亡はAさん自身の行為が原因であり、自分の指示と死亡との間には因果関係が無い」と争ったんです。
これに対して、最高裁は、因果関係を認めて、業務上過失致死罪の成立を認めました。
確かに、Aさんは、症状が悪化しても医師の診療を受けることがなく、Xさんの指示だけを信じていたという点は、落ち度があります。
でも、Xさんの指示は、次のような相当に危険なものでした。
①熱を上げること
②水分や食事を控えること
③締め切った部屋で布団をしっかりかけて汗を出すこと
そして、Xさんは何度もAさん宅に往診をして症状の悪化に気づきながらも、医師の診療を受けることはすすめませんでした。
このようなXさんの診療・指示は、それ自体危険な行為であり、そのような行為がなければ、Aさんが死亡することが無かったでしょう。
この点を、最高裁は重視して、因果関係を認めたんですね。
刑法を勉強すると、「原因となる行為と結果との間に、被害者(Aさん)の行為が介在している場合の因果関係」という論点で議論されているところです。
最高裁の結論としては、妥当なところだとは思います。
しかし、柔道整復師としての資格を持ちながら、風邪の基本的な治療法も知らないというのも無責任な話ですよね。
刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。
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