昨日の静岡市は、最高気温約34℃で、全国でも一番気温が高かったようです。
今日は、雨で、気温は昨日より大分下がっているようです。
寒暖の差が激しいので、皆様、お体には気をつけてお過ごし下さい。
さて、今回は、刑事事件の判例をピックアップしてみたいと思います。
この判例も、もちろん実際にあったお話です。
かわいそうな被害者はBさんという男性です。
Bさんは、Aさんという女性と一緒にお酒をのんでいました。
Aさんは、酒癖が悪く、Bさんは酔っぱらったAさんを何とか帰宅させようと店の外へ連れて行きました。
ところが、Aさんが大声を上げて暴れたため、それを止めようとしたBさんともみあいになってしまい、Aさんは路上に転んでしまいました。
そこに、たまたま通りかかったのがイギリス人のXさんという男性です。
騎士道精神に富んだXさんは、Aさんが、Bさんから暴行を受けていると勘違いして、Aさんを助けようとしました。
そのとき、酒癖の悪かったAさんは、よせばいいのにXさんに向かって「ヘルプ・ミー」と叫んでしまいました。
そこで、Xさんは、Bさんの暴行を止めようと勘違いして、Bさんの方に向いて両腕を差し出しました。
それを見て、Bさんは攻撃されると思って、ボクシングのファイティングポーズのような姿勢をとりました。
Xさんも、Bさんが攻撃してくると勘違いして、攻撃は最大の防御とばかりに、回し蹴りをしたんですね。
不幸なことに、Xさんは、イギリス人ながら、来日8年、空手3段の腕前だったので、その回し蹴りは強烈でした。
Bさんは、顔面にその回し蹴りを受けて、路上に転倒し、悲しいことに8日後に死亡してしまいました。
酒癖の悪いAさんが招いてしまったこの事件、さて、Xさんは傷害致死罪の罪を負うのでしょうか?
第1審は、Xさんを無罪としました。
Xさんは、Bさんが攻撃してくると勘違いして、自分の身を守ろうとして、防衛行為として相当な範囲の回し蹴りをしただけなので、傷害の故意は無い。
防衛行為をするつもりであり、攻撃としての傷害をするつもりは無かったということですね。
そして、その場の状況からして、Bさんが攻撃してくると勘違いしてもやむを得ず、Xさんには過失も無いと判断したんです。
でも、空手3段の人が、何ら凶器も所持していない相手に対して、空手技の回し蹴りを顔面にすることって、防衛行為としてもやりすぎのようにも思えます。
Bさんに特に格闘技経験がなければ、回し蹴りを避けるだけの技術も無いでしょう。
この点を重視したのが、最高裁判所です。
Xさんの行為は、防衛行為としても相当性を超えているとして、傷害致死罪の成立を認めました。
ただ、Xさんには、Aさんを守る必要があると勘違いし、更に、Bさんが自分に攻撃してくると勘違いしていたことは事実です。
そこで、過剰防衛の条文を使って、犯罪は成立するけれども、刑は減軽すべきと判断したんです。
結論としては、常識的な判断ではないかと思います。
「騎士道事件」などと言われる事件ですが、Aさんを助けようとしたのが日本人の男性だったら、ここまで大事にはならなかったかもしれません。
Aさんが酔っぱらって「ヘルプ・ミー」と叫んでしまったのが運の尽きだったんでしょうね。
刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。
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