静岡市内でも、桜が咲き始めました。
事務所から裁判所へ行く途中に、駿府公園(すんぷこうえん)という公園があります。
県庁や国の合同庁舎・裁判所がお堀沿いに建っていて、お堀の中心がその公園になっています。
駿府公園でも、桜のつぼみがほどけ始めて、三分咲きというところです。
今のところ、寒いせいか、自粛のためか、お花見をしている姿は見かけません。
静岡市内では、今週末あたりが、桜の花が見頃になるのかもしれません。
さて、弁護士をやっていると、労働問題の相談を、労働者側、使用者側両方から受ける機会があります。
法律相談や知人から、労働者としての立場の相談を受けたり、顧問先の企業や団体から使用者としての雇用の相談をされたりします。
実際の事案でも、X側・Y側両側の利益を考えていくと、バランスの良い判断ができると思います。
では、今回も「労働者」にあたるか否かについて、引き続き考えていきたいと思います。
有名な事案として、研修医が「労働者」にあたる否かが争われた裁判があります。
医師の場合、医師国家試験に合格しても、すぐに一人前の医師として活動することはなく、2年以上実地の研修を受けなければなりません。
この研修医という地位が、教育関係なのか、労働関係なのかが争われました。
事案を単純化すると、次のようになります。
Xさんは、医師国家試験に合格して、Y大学病院の耳鼻咽喉科に研修医として研修を受けていました。
Y大学病院からXさんには、月額6万円の奨学金と1万円の副直手当が支給されており、それらの支給にあたっては、源泉徴収もされていました。
この裁判例は平成17年のものですから、支給額は、あまりに低いですよね。
Xさんも、そう思って、「最低賃金法の定める賃金よりも低いのはおかしい」として、最低賃金と実際に支給された額との差額の請求をY大学病院にしていったのです。
そこで、そもそも研修医が、最低賃金法が適用される「労働者」なのかが問題となりました。
Y大学病院は、「研修医は、教えてもらう立場に過ぎず、賃金をもらって、その対価として労務(治療行為)を提供する立場ではない」と主張したんですね。
これに対して、最高裁は、「労働者」としての地位を認めて、Xさんの請求を認めました。
その理由は、次のようなものです。
① 本件での臨床研修のプログラムが研修医が医療行為等に従事することを予定していること
→ 単なる教育を受けるだけの立場ではなく、医療行為という労務を提供することが予定されている。
② Xは本件病院の休診日を除き、Yが定めた時間及び場所において、指導医の指示に従って、Y大学病院が患者に提供する医療行為に従事していたこと
→ Y大学病院との指揮監督関係の下、実際に医療行為という労務を提供していた。
③ Xに対する奨学金・副直手当の金銭の支払いにあたって、Y大学病院は源泉徴収をしていたこと
→ 奨学金・副直手当は、賃金と同じように見ることができる。
以上の事情から、研修医Xさんは、Y大学病院の医療行為に従事して、その対価として賃金をもらう「労働者」と認められたんですね。
しかし、研修医の待遇の悪さにはびっくりです。
労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。