どんな事情があれば相続権を奪うための廃除ができるの?

今日は、昼は事務所で打ち合わせと掛川市役所の法律相談、夜は破産した富士ハウスの問題について、プロジェクトチームの検討会です。

 

掛川市は、静岡県の西部にある市で、静岡県の真ん中にある静岡市からは、自動車で高速道路を使って約50分くらいの距離です。

 

天気が良いので、ドライブするつもりで運転していきたいと思います。

 

さて、前回、廃除のお話をしたので、その内容を裁判例から考えてみたいと思います。

 

廃除」というのは、相続人(相続される人)の申立や遺言によって、相続する人から、相続権を全て奪うという制度です。

 

相続人として、言でも奪えない最低限の取り分遺留分いりゅうぶんまでも奪ってしまうので、とても厳しい制度です。

 

ですから、裁判例でも、廃除を認める場合には要件をかなり厳しく判断しています。

 

廃除が認められた裁判例としては、次のようなものがありました。

 

娘が中学校から高校にかけて、家出、退学、犯罪性のある者等との交友などをして、少年院にも入れられて親にとても迷惑をかけました。

 

その後、娘は、様々な男性との交際・同棲などを経て、複数の前科のある元暴力団員と結婚してしまいました。

 

あげくの果てには、父母が婚姻に反対なのに、父の名を勝手に使用して披露宴の招待状を出してしまったという事例です。

 

この事例では、裁判所はギリギリですが、父親からの廃除請求を認めました

 

ところが、父親の財産を事実上横領していても廃除が認められなかった事例があります。

 

Aさんは甲会社の代表取締役をしていました。

 

Aさんの子であるBさんは、甲会社の取締役だったのですが、その地位を利用して、甲会社の財産を5億円以上も横領してしまいました。

 

もちろん、Bさんは捕まって、懲役5年の刑務所行きです。

 

さて、このような悪い行為をしたBさんに対して、Aさんからの推定相続人の廃除請求は認められるのでしょうか?

 

このような場合でも、東京高等裁判所は、廃除を認めませんでした。

 

理由としては、

 

①Bさんが横領したのは、Aさん自身の財産ではなく、甲会社の財産であること

 

②甲会社が資本金24億円もの大手企業であり、Aの個人企業類似のものではないこと

 

③Bさんの行為が、甲会社の建て直しを妨害するためなど意図的なものとは認められないこと

 

などをあげています。

 

Aさんの気持ちとしては、自分が代表取締役(社長)をつとめる会社の財産を横領されれば、Bさんを廃除したいかもしれません。

 

それでも、Aさんに対する「著しい非行」という廃除の要件をみたすには、甲会社の財産を横領した程度では足りないとしたんですね。

 

Aさんの財産そのものを横領していれば、違った結果になっていたかもしれません。

 

いずれにしても、裁判例では、廃除を認めるには、相当厳しい判断基準をとっているようです。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

 

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カテゴリー: 相続のお話

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