今日は土曜日ですが、仕事に出てきています。
今週で「プリズン・ブレイク~セカンドシーズン」を最終話まで見てしまいました。
「拘束からの脱走というのは人間の本能なのかも」などと、弁護士にあるまじき?感慨にふけってしまいました。
刑務所からの脱走ものには他にも「ショーシャンクの空に」など名作がありますよね。
原作の「刑務所のリタ・ヘイワース」を先に読んだのですが、スティーブンキングの筆力に負けないすばらしい映画だと思いました。
さて、これからしばらくは、相続に関する裁判のお話を続けたいとおもいます。
浮気した妻(夫)の相続権を奪う方法はあるんでしょうか?
相続権を奪う制度としては「廃除(はいじょ)」という制度があります。
廃除というのは、相続人(相続する人)が被相続人(相続される人)に対して虐待・侮辱をしたり、著しい非行があった時に、家庭裁判所の審判で相続権を奪うという制度です。
例えば、親が子供からひどい虐待を受けたとします。
この場合、親は遺言で「福祉団体に全財産を寄付する。」と書けば子供に相続させないことができるように思えます。
でも、子供には遺言でも奪えない権利(これを遺留分(いりゅうぶん)と言います。)があって、本来の相続分の2分の1は相続されてしまうんです。
そこで、その遺留分すら奪うことができる制度として、「廃除」が定められたわけです。
では、妻(夫)が浮気した場合、相続人の著しい非行があったとして、妻(夫)を相続人から廃除することができるでしょうか?
裁判で争われた事例は、妻が他の男性と同棲して内縁関係になってしまったところ、夫が妻の廃除を家庭裁判所に求めたというものです。
この場合、廃除しなくても、離婚すれば良いようにも思えます。
妻の浮気は離婚事由ですし、離婚すれば妻の相続権は全く無くなります。
この点を重視して大津の家庭裁判所は、「廃除を認める必要はない」として申立を認めませんでした。
これに対して、夫は、「夫婦としての関係はまだ続けるが、相続はさせたくないという場合もあるはずだ」として、争いました。
そうしたところ、大阪高等裁判所では、その主張が認められたんですね。
離婚と廃除とは、それぞれ別個の制度であって、そのいずれを選択するかは夫の自由だという判断です。
このように自由に選択を認めるのが裁判例・通説の考え方のようです。
ちょっと細かいお話になりますが、自由な選択を認める実務的な意味は次のようなケースで生じます。
夫の余命が残りわずかな時に、妻が浮気をしたという場合です。
この場合、浮気して出て行った妻に、夫が「財産を相続させたくない」として、離婚訴訟を起こしても、判決前に夫が死亡してしまえば、訴訟は終了してしまいます。
もちろん、判決が出ていない以上夫婦関係はそのままですので、妻は夫の財産を相続できてしまいます。
ところが、夫が廃除の審判を申し立てていたり、こっそり遺言で廃除の意思を明確に示していた場合には、結果が異なります。
廃除の審理中に夫が死亡した場合でも、夫の地位を遺産管理人(家庭裁判所が選任)が受け継いで、審理は続きます。
そして、廃除の審判がなされれば、夫が死亡した時にさかのぼって廃除の効力が生じます。
ですから、妻は相続権を奪われ、夫の財産を相続できなくなるんです。
このように、自分の命が残りわずかだと知った夫の復讐は、離婚訴訟を起こすよりも廃除の申立の方が良いんですね。
このような事件だと、夫婦ともに不幸なので、実際に関わったら重い気持ちになるんでしょうね・・・
相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。
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