自動車を運転される方は多いと思います。
交通事故は、運が悪いと誰でも起こしてしまう怖いものです。
弁護士は、各地の警察に接見に行く時や、どうしても現地に行かなければならない事件の場合、自家用車を使うことが多いです。
特に警察署は電車の駅から遠いことや、捕まった人がいた場合には原則として24~48時間以内に会いに行かなければならないので、自動車が必要なんです。
私も自動車の運転には十分気をつけているつもりですが、いつ事故にあうか分からないという気持ちはいつも持っています。
もし、交通事故を起こしてしまった場合、責任は一つではなく、「3つの責任」が問われます。
まず一つ目は、行政上の責任です。
交通事故の原因には、安全運転義務違反、スピード違反、一時停止違反、酒気帯びなど色々あります。
これらの行為については、それぞれ点数が決められています。
また、人身事故を起こすと、更に点数が加算されます。
初めての違反の場合、この点数が6点以上から免許停止、15点以上になると免許取消になるということは聞かれたことがあると思います。
そして、この場合には反則金を払わなければならないという責任も問われます。
このような点数の付加や免許停止・取消処分、反則金の支払という責任が、行政上の責任です。
あくまで、行政上の責任ですから、刑事罰と違って前科という訳ではありません。
でも、反則金の金額は改正の度に高額になっているので、違反をしてしまうと負担は決して軽くはありませんよね。
さて、交通事故を起こしてしまった場合の二つ目の責任とは何でしょう?
二つ目は刑事上の責任です。
例えば、故意に建物に突っ込んだり、自動車と衝突をするなど物を壊す運転をすれば、建造物損壊罪・器物損壊罪という刑事罰が科されます。
また、運転をしていて不注意で人にケガをさせたり、死亡させてしまえば(人身事故)、自動車運転過失致死傷罪・危険運転致死傷罪などの刑事罰が科されます。
これは、刑事罰なので、もちろん前科となってしまいます。
過失で人身事故を起こした場合、被害者のケガが軽かったり、示談が早い段階で成立していたりすると、法廷で審理せず、罰金で終わる場合もあります。
これに対して、被害者が骨折するなど傷害の程度が重かったり、死亡したような場合には、法廷での審理(公判)を開くことが多いです。
公判で審理されても、初犯で、特に悪質性が高くなければ、禁固又は懲役刑に執行猶予がつく可能性は高いです。
また、悪質なケースでない場合には、勾留されないで、自宅に返されて、裁判の時に自分で出頭してくれば良い(在宅事件)ことも多いです。
ただ、被害者が死亡しているケースは、遺族の被害感情がとても強い場合も多いので、弁護人として引き受ける場合には、相当の覚悟が必要です。
私も過去に何回か被害者亡くなられている交通事故の刑事裁判の弁護人をしたことがあります。
ケースによっては、被告人(加害者)のために、被害者の落ち度(例えば、道路に飛び出してきたなど)を主張しなければならないこともあります。
遺族の気持ちを考えると相当つらいものがありました。
交通事故は、被害者も加害者も、その人生を変えてしまうので、本当に気をつけたいものです。
さて、交通事故3つの責任の最後は、民事上の責任です。
民法には、故意又は過失によって他人の権利を侵害した者は損害賠償の責任があるという定めがあります。
これを不法行為(ふほうこうい)と言います。
不注意で交通事故を起こして、他人をケガさせたり死亡させてしまった場合には、過失により他人の権利(生命・身体)を侵害したことになりますよね。
ですから、民法のこの規定によって、加害者は被害者に対して損害賠償の責任を負うのです。
この損害賠償の責任、つまり損害をお金に代えて支払うという責任が民事上の責任です。
この損害賠償の額は、人が死亡したり、大きなケガで後遺症が残ったりすると、数千万円になります。
簡単に支払える金額ではないため、保険が必要になります。
強制で自動車損害賠償保険への加入が義務づけられていますが、それだけでは賠償額が不足することが多いです。
そこで、多くの方は任意の自動車損害賠償保険に加入していると思います。
事故が起きた場合には、その任意で加入している保険会社に相手の保険会社と交渉して、損害賠償の額を決めていったりします。
ただ、保険会社が被害者に提示する額は、過去の裁判例よりやや低い額の場合もありますが、むしろ、かけ離れて低い場合の方が多いように思えます。
ある事案では、保険会社から約800万円の提示を受けたとのご相談でしたが、裁判で法的に認められる額を争ったたところ約3,000万円の裁判所の判断がありました。
保険会社から提示を受けたら、まず、お近くの弁護士にご相談の上、提示額が妥当かどうか確認した方が良いでしょう。
交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。
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