刑事弁護をやっっていると、時々否認(ひにん)事件にあたることがあります。
否認事件と自白事件については以前のブログでご説明しましたよね。
つまり、否認事件というのは、被告人(被疑者)が疑いをかけられている犯罪を「やっていない」と否定している事件のことです。
事件の数から言えば、自白事件、つまり、犯行を認めている事件の方がはるかに多いのですが、やはり、否認事件もあったりします。
ここで、弁護人から見ても「ひょっとしたら無罪かも」と思えるような事件であれば、あまり問題ありません。
被告人に不利な事実は争い、有利な事実は主張していけば良いんです。
ところが、弁護人から見て「どう見ても有罪」としか思えないような事件の場合は困ります。
例えば、窃盗事件で、被告人は「無罪だ!」と主張しているのに、
窃盗の被害品は被告人が持っていて、
防犯カメラにもバッチリ被告人が写っている上、
目撃証人もいるような場合です。
このような場合、被告人の言うとおり無罪の主張をすると、裁判官からは「反省の色が見られない」として、重い量刑をされる可能性があります。
かといって、弁護人は被告人のために行動しなければならないので、被告人が「無罪だ」と言っているのに、有罪を前提として「反省しています」などとは言えません。
こんな場合、真実を法廷で明らかにする義務(真実義務)と被告人を擁護する義務(弁護義務)という弁護人の2つの義務が衝突します。
では、どうすれば良いのでしょうか。
まずは、被告人とコミュニケーションをしっかりとることが大切です。
そして、次のことを説明していきます。
① この事件では、証拠からみて有罪になる可能性がとても高いこと
② 否認し続けると不利な情状として、重い刑もあり得ること
③ 素直に認めて反省の情を示した方が裁判が速く終わる可能性もあること
です。
これらの事情を説明して説得を図っても、被告人が無罪の主張をやめない場合はどうすれば良いのでしょうか。
そのような時は、やむを得ず、被告人の意思に沿って無罪主張をするしかありません。
例えば、
被害品は誰かからもらったもの、
防犯カメラの画像は別人、
目撃証人は見間違い
というような主張を、無理な主張だと思いつつしていくしかないんです。
皆さんが裁判員になって、不合理と思われる主張を一生懸命している弁護人を見たら、事情があるとわかっていただけるとうれしいです。
刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。
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