今日は、静岡は雨です。
秋は「秋晴れ」というイメージがあるので、雨が降るとなんとなく残念な気分になります。
さて、生命保険については、特定の人が受取人として指定されている場合には、相続財産とはならないと前回言いました。
しかし、これをそのまま適用するだけだと、とても不公平になる場合があります。
例えば、前々回と同じ例で、夫婦と子供2人(長男・長女)の家庭でお父さんが死亡したとします。
お父さんが長男だけを保険金の受取人としていて、6,000万円の保険をかけてあったとしましょう。
お父さんの財産は、その他には、預金2,0000万円があるだけです。
これを法定相続分に応じて分けると、お母さんが1,000万円、長女は500万円相続することになります。
これに対して、長男は、500万円の預金の他、」6,000万円の保険金を独り占めして受け取ることができます。
これでは、あまりに不公平です。
そこで、長男が受け取った保険金に関する利益を特別受益(とくべつじゅえき)として持ち戻すことが考えられます。
過去の審判としては、認めたもの、認めないもの両方がありましたが、最高裁は原則として特別受益と認めないが、特段の事情がある場合には認めるという判断をしました。
なお、「特別受益」と「持ち戻し」については前々回にご説明してありますので、そこをご参照ください。
仮に、認められた場合に問題になるのは、長男が持ち戻さなければならない金額です。
① 保険金6,000万円全額という説
② お父さんが死亡した時点の解約返戻金(かいやくへんれいきん)の金額とする説
③ お父さんが払い込んだ保険料の額という説
があります。
解約返戻金というのは、保険を解約した時に帰ってくるお金のことです。
いずれの説をとるかによって、持ち戻される金額が変わってきますが、①~③の順で持ち戻される金額は減るのが通常です。
審判例では確定したものが無いようなので、個別の事情によって異なってくると思います。
仮に、中間の②説に立って、400万円の解約返戻金が発生していたとして計算してみましょう。
そうすると、預金2,000万円という相続財産に対して、400万円の解約返戻金を持ち戻すことになります。
結局、2,400万円の相続財産を、3人で分けることになります。
具体的な相続分は、お母さんが1/2の1,200万円、子供二人が600万円づつということになります。
ただ、長男は既に400万円の特別受益を受け取っていますから、600万円-400万円=200万円しか相続できないことになります。
これで、被相続人(お父さん)の意思(あえて保険金の受取人を長男と指定したこと)を大切にしつつ、不公平を少しでも是正するということになります。
相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。
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