前回の廃除(はいじょ)のお話の続きです。
以前お話した相続欠格(そうぞくけっかく)では、「相続人が遺産を得るために被相続人を殺す」というようなひどい行為でした。
そこまでいかなくても、相続人(前編の例では長男)が、被相続人(相続される人、前編では父親)にひどいことをする場合があります。
このような場合に、被相続人(例えば父親)の意思と家庭裁判所の審判で、相続人(例えば長男)から相続権を奪うことを認めました。
それが、廃除という制度です。
民法では以下のように定めています。
① 被相続人に対する虐待(ぎゃくたい)もしくは重大な侮辱(ぶじょく)
② その他の著しい非行
がある場合に、被相続人から家庭裁判所に廃除の請求をすることができる。
つまり、ドラ息子・娘には遺産をやらないことができるという制度です。
もっとも、廃除というのは、相続人から一切の相続権を失わせるものですから、裁判所も簡単には認める審判をしません。
認められなかった例としては次のようなものがあります。
息子が、転職や借金をくりかえして、家族名義でもお金を借りてしまいました。
結局、その息子は、その300万円弱もの借金を返済しようとしなかったのですが、父親からの廃除の請求を認めませんでした。
では、どのような事例では認められるんでしょうか?
例えば、よく出てくる裁判例ですが、娘が中学校から高校にかけて、家出、退学、犯罪性のある者等との交友などをして、少年院にも入れられて親にとても迷惑をかけました。
その後、娘は、様々な男性との交際・同棲などを経て、複数の前科のある元暴力団員と結婚してしまいました。
あげくの果てには、父母が婚姻に反対なのに、父の名を勝手に使用して披露宴の招待状を出してしまったという事例です。
この事例で、裁判所は最終的に父親からの廃除請求を認めました。
ただ、これでも、最初の審判では廃除は認められず、東京高裁に抗告(最初の審判への異議)をしてやっと認められた事案です。
つまり、ちょうどボーダーになる事案ということですね。
廃除を認めてもらうためには、相続人に相当のひどい行動が必要で、裁判でその証明もしっかりやっていかなければならないということなんですね。
相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。
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