民法改正(令和2年4月1日施行)
消滅時効の援用に関する規定が改正されました。
時効の援用の既定(145条)
・時効を理由に債権を消滅させるためには、これを主張(援用)しなけれ ばなりません。
・これまで、時効を援用できる人(時効援用権者)について、論点となっ ていましたが、これを判例の解釈に合わせて条文で明確にしました。
・条文で、時効を援用するだけの「正当な利益を有する者」と定義しまし た。その上で、「保証人、物上保証人、第三取得者」を具体例として示しました。
民法改正(令和2年4月1日施行)
消滅時効の援用に関する規定が改正されました。
時効の援用の既定(145条)
・時効を理由に債権を消滅させるためには、これを主張(援用)しなけれ ばなりません。
・これまで、時効を援用できる人(時効援用権者)について、論点となっ ていましたが、これを判例の解釈に合わせて条文で明確にしました。
・条文で、時効を援用するだけの「正当な利益を有する者」と定義しまし た。その上で、「保証人、物上保証人、第三取得者」を具体例として示しました。
民法改正(令和2年4月1日施行)
無効と取消に関する規定が改正されました。
1 原状回復義務(121条の2)
(1)1項
・最初から無効な法律行為や取り消しにより無効とみなされた行為については、旧法では不当利得の規定によることになっていました。
・しかし、それによると、売買契約で売主も買主も無効の原因を知らずに物を購入した場合に規定上、不公平な結果となります。
・例えば、ミネラルウォーターの売買の場合、買主がミネラルウォーターを全部飲んでしまえば返さなくて良いの対し、売主は代金を返さなければならないということになるのです。
・そこで、無効な行為により債務が履行された場合(先ほどの例では、ミネラルウォーターの引渡と代金の支払い)には、お互いにそれを返し合うという原状回復義務の条項を新設しました。
(2)2項
・贈与のような無償行為の場合は、無効だから消費してしまった物を返せというのには無理があります。
・例えば、未成年からミネラルウォーターをもらって飲んだときに、後で取り消されてミネラルウォーターの代金分を返すというのは、常識とは反します。
・そこで、ミネラルウォーターをもらった(贈与)人は、現に利益が存する範囲での返還で足るとして、飲んでしまったら返さなくて良いことになりました。
(3)3項
・また、意思能力が無かったり、行為能力が制限されている人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)については、無効や取り消しにより不利益を受けないよう保護する必要があります。
・そこで、意思無能力者及び制限行為能力者は、無効や取り消しにより返還をしなければならない場合でも、現存利益の返還で足りることとしました。
2 追認の要件(124条)
・取り消しができる行為を追認する要件として、旧法では「取消の原因状況の消滅」のみを規定していました。
・しかし、判例は、「追認をする者が取消権を有することを知っていること」も要件としていたため、これを条文に明示しました。
民法改正(令和2年4月1日施行)
代理に関する規定が改正されました。
1 代理行為の瑕疵(101条)
(1)代理行為の瑕疵がある場合を、以下の二つの場合に分けました。
① 代理人が瑕疵ある意思表示をした場合
② 相手方の瑕疵ある意思表示を代理人が受領したとき
・①の場合は代理人自身の意思に瑕疵があるか否かで判断します。
・②の場合にも、相手方の一定の事情を知っているか否かなど(善意・悪 意・無過失など)で効力が変わる場合には代理人を基準にします。
・いずれの場合にも代理人を基準とすることを明文化しました。
(2)また、特定の法律行為を本人が代理人に委託した場合について、判例
に従って改正しました。
・この場合、仮に「指図に従って」いなくても、本人が知っていた事情 については、代理人が知らなかったことを主張できないことを条文に明記しました。
2 代理人の行為能力(102条)
・制限行為能力者が代理人として行った契約などの法律行為は、その能力 を理由に取り消せないのは、改正前と変わりません。
・ただ、制限行為能力者(例えば未成年者)が、他の制限行為能力者の法 定代理人としてした行為については取り消せることを規定しました。
3 任意代理人による復代理人の選任(104条)
・旧法では、任意代理人は復代理人の行為について、選任・監督の責任を 負うだけでした。
・この規定を削除して、任意代理人の責任を重くして、原則として復代理 人の行為について責任を負うこととしました。
・これは、任意代理人が復代理人ではなく履行補助者を使用した場合には原則として責任を負うことと合わせたものです。
4 代理権の濫用(107条)
・旧法では代理権の濫用についての規定はなく、判例が旧法93条但書を 類適用して、本人と相手方の利益を調整していました。
・この類推適用が実務の慣行となったため、条文を新設したものです。
5 自己契約・双方代理(108条)
・自己契約・双方代理の効果について、これまで解釈で無権代理と同様に 処理されていたものを明文化しました。
・つまり、自己契約・双方代理は代理権が無い者がおこなった(無権代理 行為)とみなされます。
・自己契約・双方代理以外の利益相反行為も、本人の事前の許諾がある場 合を除いては、やはり無権代理行為とみなされることになりました。
6 代理権授与表示の表見代理(109条2項)
・代理権が無いのに代理権授与の表示をした場合に、その表示された他人 (無権代理人)が、表示された権限を越えた場合に、解釈により本条と110条とを重ねて適用されていました(判例)。
・これは、取引安全のために、解釈により一定の正当な事由がある第三者 を保護しようとしたものです。
・これを民法の条文として明文化しました。
7 代理権消滅後の表見代理(112条2項)
・上記6の場合と同様に第三者保護のために、本条と110条とを重ねて 適用すると解釈していたことを明文化したものです。
8 無権代理人の責任(117条)
・代理権の無い代理人(無権代理人)と取引をした相手方が、過失で無権 代理に気づかなかったとしても、もし、無権代理人が代理権がないことを知っていた場合には保護する必要がありません。
・そこで、このような場合には、相手方は過失があっても、無権代理人に 対しては責任を追及できることを新たに規定しました。
民法改正(令和2年4月1日施行)
意思表示の到達についての規定(97条、98条の2)が改正されました。
1 意思表示の到達時期
・意思表示の効力発生時期について条文に明記しました。
・手紙のような遠隔地の間だけでなく、直接対話をしている場合も含めて「到達した時からその効力を生ずる」と明記しました。
・意思表示を届けようとした相手方が、もし正当な理由なく意思表示が到着するのを妨げたときには、通常到達すべきときに到達したものとみなすという規定を設けました。
2 意思表示の受領能力
・意思表示を受領する能力が無い者の中に、意思無能力者が含まれることを明記しました。
・これは、意思無能力者が改正により明文化されたこと(3条の2)と合わせたものです。
民法改正(令和2年4月1日施行)
詐欺の規定(民法96条)が改正されました。
1 第三者を保護する規定の要件の厳格化
詐欺により契約などの法律行為が取り消された場合の第三者保護規定が改正されました。
・旧法「善意」⇒ 改正法「善意無過失」
・これは、第三者を保護する要件を厳しくしたものです。
・その理由は、欺された人が被害者であり、その被害者を犠牲にしてまで第三者が保護されるためには、厳格な要件が必要だと考えられるからです。
・通謀虚偽表示(民法94条)の場合の利益考量と同じようにバランスをとって、他の民法の規定と解釈を統一しました。
2 第三者の詐欺に関する規定の改正
欺された人(被害者)が取消できる範囲を拡大しました。
・旧法では、相手方が「悪意」の場合に限られていたが、改正法では、相手方が「悪意」に加えて「知ることができた場合」(有過失)にも取消できることとしました。
民法改正(令和2年4月1日施行)
錯誤(95条)の規定が改正されました。
1 要素の錯誤を以下の2要件として明文化した。
① 錯誤に基づき意思表示がされていたこと(主観的な因果関係の存在)
② 錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること(客観的な重要性の存在)
・旧法でも錯誤の解釈の基準となっていたことを、条文で明確にしたものです。
2 錯誤が認められる場合の法律効果を改正した。
・旧法「無効」⇒改正後「取消」
・意思表示に欠陥がある場合には、取消できることとして統一したものです。
3 意思表示の錯誤と動機の錯誤を整理して明文化
・意思表示の錯誤とは「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」。
・動機の錯誤とは「表意者が法律行為の基礎とした事情についてその認識が真実に反する錯誤」。
・このように、旧法では条文にはなく、解釈で導き出されていた「動機の錯誤」を明文化して整理しました。
・旧法の解釈と同様、「動機の錯誤」の場合、取消をするためには、動機が表示されていることが必要であることも明文化しました。
4 表意者に重過失ある場合でも取消ができる場合
・表意者に重過失があっても、以下の2つの場合には取消が可能です。
① 相手方に悪意又は重過失ある場合
② 共通錯誤の場合
【共通錯誤の例】
双方ともゴルフ場会員権の価値400万円と評価していたが、6000万円の払戻金が売主になされたようなケース。
5 第三者を保護する規定の新設
・錯誤取り消しの場合には、善意・無過失の第三者は保護されることとしました。
民法改正(令和2年4月1日施行)
心裡留保(93条)の規定が改正されました。
1 条文の文言を分かりやすいものに修正
・旧法「真意を知り又は知ることができたとき」
⇒改正法「真意では無いことを知り、又は知ることができたとき」
・もともと旧法でも解釈で修正されていた(通説)内容を明文化したものです。
2 第三者保護規定の新設
・法律行為が心裡留保により無効となる場合に、善意の第三者を保護する規定を新たに設けました。
・これは、94条2項の類推適用(判例)を明文化したものであり、外観を作出した表意者の責任の重さを重視して、第三者を保護する要件を善意で足りるとしたものです。
民法改正(令和2年4月1日施行)
公序良俗違反無効(民法90条)が改正されました。
公序良俗に反する「事項を目的とする」⇒「法律行為」と改正しました。
・内容自体が公序良俗に反しなくても,その動機を相手が知っているような場合も含むことを明確にしまたものです。
・例えば、賭博で負けた債務を返すために借金をしたとき、そのことをお金を貸す方が知っていれば、公序良俗違反で無効となります。
民法改正(令和2年4月1日施行)
意思無能力の法律行為を無効と規定しました。
今までは、意思能力が無い人、つまり、乳幼児や重い認知症の人には、契約などをする能力はないと解釈されていました。
もっとも、民法にはその明文の規定がありませんでした。
そこで、「意思能力が無い契約などの法律行為は無効」であることを明確に規定したものです(民法3条の2)。
1 認知症を見つけるチェックポイント
(1)記憶障害
(2)見当識障害
→ 現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなどの周囲の基本的な状況を把握する能力に問題が出てくること。
(3)理解・判断力の障害
① 考えるスピードが遅くなる
② 二つ以上のことが重なるとうまく処理できなくなる
③ 些細な変化、いつもと違うできごとで混乱を来しやすくなる
④ 観念的な事柄と、現実的、具体的なことがらが結びつかなくなる
(4)実行機能障害
(5)感情表現の変化
→ 認知症になるとその場の状況が読めなずに、周囲の人が予測しない感情の反応を示すことがある。
2 認知症の程度を判断する基準
(1)長谷川式簡易スケール
→ これらの質問に対する回答で、合計20点を切ると認知症の可能性あり。
(2)要介護度
3 認知症になると何が問題か
(1)身上監護が必要となる
(2)財産管理が必要となる
4 親が自分で何とか判断・行動ができる段階での対策
(1)日常生活自立支援事業の利用
(2)家庭裁判所の審判で補助人を選任
(3)家庭裁判所の審判で保佐人を選任
5 親が自分で判断・行動ができなくなった段階での対策
(1)家庭裁判所の審判で成年後見人を選任
① 法定後見
→ 「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」
→ 小学校低学年以下程度の判断能力のイメージ
② 任意後見契約
(2)親族が後見人になるケース
(3)弁護士が後見人になるケース
6 死亡後の注意点
(1)財産の調査を早めにすること
(2)預金の凍結
(3)葬儀費用の支出は誰がする?
(4)遺産の分け方に関する注意点
① 遺言がある場合
② 遺言が無い場合