弁護士になる前の司法修習(研修期間)や弁護士になったばかりに、先輩から「自分の特長を出していくことが大事だ」とアドバイスされました。
複数の先輩弁護士から言われた共通のことなので、おそらく弁護士の世界では大切なことだとは理解できました。
たとえば、「重大犯罪の刑事事件の経験が豊富」「企業の再生ならおまかせ」「犯罪被害者の援助なら何でもできる」などでしょう。
しかし、私が弁護士をやり始めたころは、「自分の特長」を何にするかが全く決まりませんでした。
そこで、私は、いろいろなビジネス書、他分野の専門家の本、自分の挫折や欠点をどう成功に変えたのかの経験が書いてある本を読んでみました。
そうして共通する考え方で自分に当てはまるものを集めると
「他の人から何気なく評価された言葉を探す。それが自分では気づかない自分のストロングポイントだ」
という結論になりました。
たとえば、サッカー日本代表の福西選手の本では、自分がプロサッカー選手の中ではスピードが無いことを自覚して、ストロングポイントを探していました。
そして、彼が試合を振り返ると、相手選手からボールを奪ったときに
「届くのかよ!」
と相手選手が声を上げるのを聞いたことを思い出しました。
そこで、自分が日本人の中では、黒人選手のような膝関節の柔らかさや伸びがあることや、体が当たった時に自分の軸がずれない体の強さがあることに気づいたんですね。
それを自分に当てはめて、考えてみました。
そうすると、司法試験の受験勉強をしていた時に、公務員試験の対策をする予備校で法律を教える講師をしていたことにヒントを見つけました。
その予備校では生徒からの講師評価アンケートに基づいて、時給を決めたり講師を変えたりしていたんですね。
私が、民法の講義を初めてやった年の終わりに、事務局から「民法でこのアンケート結果は前代未聞です!」とほめられました。
その結果、私の時給はどんどん上がっていきました。
いつの間にか、私の講義は、新人講師の研修用のものとなり、ガイダンスでは、その予備校の「看板講師」と紹介されるようになっていました。
そういえば、県庁でサラリーマンをやっていた時代も、本庁で予算獲得のために財政課に施行法律や事業内容を説明する時にも、「説明がわかりやすいから」と上司の代わりに呼ばれることも多々ありました。
そうすると、
「ひょっとしたら、私は法律をわかりやすく、専門家でない人に説明することに向いているのではないか?」
と思うようになりました。
そして、もともと私は他の人に「何か大事だと思うこと」を分かってもらうように説明するという行為自体が大好きです。
ここまでくれば、弁護士としての私のストロングポイントの一つに、
① 相談者の方に事件をどう法律で解決するかわかりやすく説明すること
② 専門家でない方々に分かりやすく法律の話をすること
が当てはまるのではないかと判断できます。
そこで、私は、法律相談で分かりやすく説明することや、色々なところで講義をすることで、自分の特長を出したいと思うようになったのでした
現在では、
① 「常葉大学法学部法律学科」の講師
これは、大学生に実務としての法律を知ってもらうために、「市民と裁判」というタイトルで裁判員裁判から消費者問題まで、学生が知っておくといつか役にたつと思うテーマを講義しています。
もちろん、正式な単位の講義ですからテストもありますし、成績もつけます。
問題作成の時には、「誰でも一定のことは書けるけれど、しっかりと差がつく問題」を作るよう毎年苦労しています。
初々しい若者を相手に講義することで、私にとってはリフレッシュの時間にもなっています。
② 「宅地建物取引士」の免許更新の法定講習の講師
これは、昔は「宅建免許」と呼ばれていましたが、平成27年度から「宅地建物取引士(宅建士)」という名称に変わりました。
より法律的な知識をしっかりしてもらおうという意図があるようで、私の法律や実務のトラブル解決事例の講義時間が昨年度までは1時間30分だったのですが、2時間に増えました。
これは年間5回ほど、不動産業者の方を対象に静岡市内と沼津市内で講義をやっており、もう6年目になっています。
さすがに、この法定講習を受けないと免許が消えてしまうため、運営も厳格ですし、出席者の方々も真剣です。
民法も改正されて、不動産関係の法律も変わったので、また勉強して教えていきたいと思います。