代理に関する規定の整理と修正

民法改正(令和2年4月1日施行)

代理に関する規定が改正されました。

 

1 代理行為の瑕疵(101条)

(1)代理行為の瑕疵がある場合を、以下の二つの場合に分けました。

① 代理人が瑕疵ある意思表示をした場合

② 相手方の瑕疵ある意思表示を代理人が受領したとき

・①の場合は代理人自身の意思に瑕疵があるか否かで判断します。

・②の場合にも、相手方の一定の事情を知っているか否かなど(善意・悪 意・無過失など)で効力が変わる場合には代理人を基準にします。

・いずれの場合にも代理人を基準とすることを明文化しました。

(2)また、特定の法律行為を本人が代理人に委託した場合について、判例
  に従って改正しました。

・この場合、仮に「指図に従って」いなくても、本人が知っていた事情 については、代理人が知らなかったことを主張できないことを条文に明記しました。
  

 

2 代理人の行為能力(102条)

・制限行為能力者が代理人として行った契約などの法律行為は、その能力 を理由に取り消せないのは、改正前と変わりません。

・ただ、制限行為能力者(例えば未成年者)が、他の制限行為能力者の法 定代理人としてした行為については取り消せることを規定しました。

  

 

3 任意代理人による復代理人の選任(104条)

・旧法では、任意代理人は復代理人の行為について、選任・監督の責任を 負うだけでした。

・この規定を削除して、任意代理人の責任を重くして、原則として復代理 人の行為について責任を負うこととしました。

・これは、任意代理人が復代理人ではなく履行補助者を使用した場合には原則として責任を負うことと合わせたものです。

 

4 代理権の濫用(107条)

・旧法では代理権の濫用についての規定はなく、判例が旧法93条但書を 類適用して、本人と相手方の利益を調整していました。

・この類推適用が実務の慣行となったため、条文を新設したものです。

 

5 自己契約・双方代理(108条)

・自己契約・双方代理の効果について、これまで解釈で無権代理と同様に 処理されていたものを明文化しました。

・つまり、自己契約・双方代理は代理権が無い者がおこなった(無権代理 行為)とみなされます。

・自己契約・双方代理以外の利益相反行為も、本人の事前の許諾がある場 合を除いては、やはり無権代理行為とみなされることになりました。

 

6 代理権授与表示の表見代理(109条2項)

・代理権が無いのに代理権授与の表示をした場合に、その表示された他人 (無権代理人)が、表示された権限を越えた場合に、解釈により本条と110条とを重ねて適用されていました(判例)。

・これは、取引安全のために、解釈により一定の正当な事由がある第三者 を保護しようとしたものです。

・これを民法の条文として明文化しました。

 

7 代理権消滅後の表見代理(112条2項)

・上記6の場合と同様に第三者保護のために、本条と110条とを重ねて 適用すると解釈していたことを明文化したものです。

 

8 無権代理人の責任(117条)

・代理権の無い代理人(無権代理人)と取引をした相手方が、過失で無権 代理に気づかなかったとしても、もし、無権代理人が代理権がないことを知っていた場合には保護する必要がありません。

・そこで、このような場合には、相手方は過失があっても、無権代理人に 対しては責任を追及できることを新たに規定しました。

 

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