福祉施設の廃業につき、関係者に配慮しつつ破産を申し立て

【相談前の状況】

デイサービスを運営する会社の代表者(60代・男性)から、支払いが困難になってご相談を受けました。

施設の利用者は、要介護2前後の高齢者であり、代表者の努力もあって経営に必要な利用回数も維持できていました。

ところが、新型コロナウイルス感染の拡大で、利用者がデイサービスに通うのを自粛して利用回数が激減してしまいました。

人件費や家賃の固定経費を賄うために、コロナ融資を含めて代表者連帯保証人となって借入をしましたが、毎月の利息の返済で精一杯でした。

その後は少しずつ利用者も戻り始めましたが、利息額も増えていき、コロナ融資の返済も開始することになったため経営の継続が難しくなってしまいました

 

【相談・依頼から解決へ】

自己破産することを確定する前に、福祉施設の利用者の介護に支障を生じないよう配慮するようアドバイスしました。

利用者には事業縮小を告げて、一人一人デイサービスの行き先を変えてもらいました。

利用者が少なくなっていく中で、従業員にも退職してもらい未払の給与が発生しないようにしてもらいました。

利用者の全員につき行き先が決まった段階で廃業を決めて、自己破産の申し立ての依頼を受けました。

また、施設の建物を借りていて、福祉施設用の改造をしたり、特別な器具を使ったりしていたため、売却、処分などにより残すものを減らしました。

賃貸人(家主)となっている会社には、自己破産による解約の申入とともに、原状回復できない範囲を説明して、どのように処理すれば良いか説明しました。

その結果、利用者が行き場を失うことを避けられ、また賃貸人(家主)も納得まではいきませんが、手続についての理解はしてもらい、大きな紛争となることなく手続を進めることができました。

そのため、代表者も連帯債務につき免責を受けて、再スタートを切ることができました。

 

【弁護士のコメント】

福祉施設の場合には、利用者の保護という福祉上の配慮が必要であったり、建物が改造されて転用が難しいという問題があったりします。

これらの問題の優先順位を考えつつ、これを一つ一つクリアしていくことで、代表者も次のスタートが切りやすくなります。

会社の破産の場合、それぞれ特有の事情があるので、相談のときに的確なアドバイスをもらえるかで、代表者のその後の苦労が大きく違ってくるので注意が必要です。

 

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